第55回 勉強会  「パックス・アメリカーナの衰微とネオブロック化

-今後の米国経済政策と日米中経済関係のゆくえ-」

平成29年4月7日(金) 18:30~20:45 PORTA神楽坂7F 理窓会第2会議室

 

概要

トランプ政権の展開が、これまでの米国主導の世界経済の仕組みを一層激しく揺り動かし ている。この動向をどう見据えるか。

このことについて、時間的・空間的に醸成されてきた米国という国そのものの特性をおさえ、経済体制の変化の流れを鳥瞰したうえで、特に日米中の経済関係が交錯する環太平洋圏での動きに焦点を当てつつ、考察を進め、議論を深めてゆきたい。

 

大森 拓麿 氏

 

講師 新潟大学 経済学部経済学科比較経済 人文社会・教育科学系 

         地域社会支援系列 准教授

 

   博士(経済学),理論経済学,東京大学,課程,2003年11月

 

   新潟大学 経済学部 経済学科 比較経済,准教授,2007年11月 ~ 継続中

   新潟大学 現代社会文化研究科 共生社会研究専攻,准教授,2012年04月 ~ 継続中

   新潟大学 現代社会文化研究科 経済経営専攻,准教授,2012年04月 ~ 継続中

 

【講演要旨】

NPO「危機管理研究会」第55回勉強会,2017年4月7日実施

 

演題:「パックス・アメリカーナ」の衰微と「ネオブロック化」

   ‐今後の米国経済政策と日米中の経済関係のゆくえ‐

 

 米国でトランプ政権が発足して3ヶ月が経とうとするが,世界を取り巻く不穏で内向きの情勢は混迷を極め,米国のみならず環太平洋圏の国々はいったいどこへ進んでしまうのか。

 本講演では,この点を展望すべく,上掲の演題を立て,3つの内容を組み,順序立てて話が進められました。すなわち,

 

① そもそも米国とはどういう性質を持つ国家で,どういう歴史を紡いできたのか。

 

② 建国後の短い歴史の中で,米国は世界を政治経済的に司る国家としてどのような経緯で成り上がり.その後の軋みにどういう政策を打ち対処してきたのか。

 

③ 米国中心の世界経済の体制(「パックス・アメリカーナ」)の衰微の主因を中国の台頭に求め,世界の基軸を揺らす米中経済関係がそもそもどういう特異性を持つものなのか。

 

 また,米中経済関係の変移が「ネオブロック化」の沈着する世界において,環太平洋圏とりわけ米中に挟まれた日本が,どのような関係性の下に揉まれていくのか。以上の問題意識に基づいて,論説が披露されました。

 

 論説の流れは,以下の通りです。

 

① 米国は,50の州か連帯した「連邦制国家」で,普段は州の自治を重んじ,それを脅かす対外的な脅威には,連帯して抗う。

 この普遍的な特質は,建国期に既に体得され,この理念が国名や国旗,憲法の中身に反映され,現在もなお貫かれている。

 

② 建国後の米国は,英国中心の世界経済の体制(「パックス・ブリタニカ」)の下で成長を遂げる。

 19世紀の後半から20世紀の前半にかけて,米国など当時の新興諸国の産業・金融部面での台頭が「パックス・ブリタニカ」の衰微を招く。

 その衰微は世界大恐慌を挟み,植民地経営を前提にした世界分割の動き(「ブロック化」)を生み,凄惨な2つの世界大戦を招いた。

 その後に成立・展開される「パックス・アメリカーナ」の盛衰はトランプ米国大統領の人生の推移と連動している。

 トランプ政権の米国は,「パックス・アメリカーナ」の最盛期の再来を念頭に,「強い米国の再来」を求めた1980年代のレーガノミックスと2000年代のブッシュイズムの型を現在にあてがう政策方針を,グローバル化の行き過ぎで内向きの「ネオブロック化」が進む世界の下で進めようとしている。

 

③ 21世紀に入り「ネオブロック化」の進む世界経済の基軸を揺らしているのは,中国である。

 米中経済関係の特質は,「門戸開放の方針」に由来する独特の信頼関係を基底に,冷戦を経て、濃密な貿易・金融関係の進展に裏打ちされた拮抗的な政治関係を重層的に紡いでいる。

 「パックス・アメリカーナ」の衰微は米中の貿易・金融関係の変動に左右されるが,米ドルの価値に依存する人民元の通貨体制を前提に経済を成長させてきた中国にとり,通貨の覇権を狙う実力に乏しく,「ネオブロック化」する世界の下でも,米中経済関係のねじれは変わらない。

 

 そこに挟まれた日本は,むしろ多国間交渉を踏まえた政治経済的な秩序を動かせる立位置になり,喩えて言えば「トランプの切り札」をいかに揃え,いかに使うかが,従前にも増して問われることになる。

 

以上の講演内容です。

 

 講演後にはフロアから露と日米中との今後の関係性のゆくえや,米国と中東や北東アジアの不穏な情勢をどう見るかなどの質疑が出され,活発な議論が交わされたのち,盛会のうちに閉幕を迎えることができました。

 

聴講風景

聴講風景

懇親会風景

 

大森先生 著書著作

 

米中融合論の再検討,大森拓磨,Working Papers(新潟大学経済学会),No.第161, pp.1-20,2013年07月,日本語

研究論文(その他学術会議資料等),単著

 

黎明期アメリカ・インディアナの銀行制度 1855‐1865年 ‐アメリカ連邦準備制度の新たな嚆矢として(Ⅴ・完)‐,大森拓磨,新潟大学経済論集,No.第92, pp.25-67,2012年03月,日本語

研究論文(大学,研究機関紀要),単著

 

書評:毛利良一著『アメリカ金融覇権 終りの始まり』(新日本出版社・2010年),大森拓磨,季刊 経済理論,Vol.第48,No.第1, pp.89-91,2011年04月,中国語

研究論文(学術雑誌),単著,理論経済学

 

通貨・信用秩序の健全性管理における地域的自生,大森拓磨,Working Papers,No.第140,2011年04月,日本語

研究論文(その他学術会議資料等),単著

 

黎明期アメリカ・インディアナの銀行制度 1842‐1855年 ‐アメリカ連邦準備制度の新たな嚆矢として(Ⅳ)‐,大森拓磨,新潟大学経済論集,No.第90, pp.51-94,2011年03月,日本語

研究論文(大学,研究機関紀要),単著

 

リーマンショックを契機とした米中経済関係の変化,大森拓磨,Working Papers (新潟大学経済学会),No.第117, pp.1-12,2010年04月,日本語

研究論文(その他学術会議資料等),単著,理論経済学,経済政策

 

黎明期アメリカ・インディアナの銀行制度 1834‐1842年 ‐アメリカ連邦準備制度の新たな嚆矢として(Ⅲ)‐,大森拓磨,新潟大学経済論集(新潟大学経済学会),No.第87, pp.43-99,2009年09月,日本語

研究論文(大学,研究機関紀要),単著,理論経済学,経済政策

 

現代の中国経済の実相とアメリカ経済‐2006年から2008年上半期までの動向を中心に‐,大森拓磨,Working Papers(新潟大学経済学会),No.第91,2008年10月,日本語

研究論文(その他学術会議資料等),単著,理論経済学,経済政策

 

黎明期アメリカ・インディアナの銀行制度 1832-1834年‐アメリカ連邦準備制度の新たな嚆矢として(Ⅱ)‐,大森拓磨,新潟大学経済論集(新潟大学経済学会),No.第85, pp.37-76,2008年09月,日本語

研究論文(大学,研究機関紀要),単著,理論経済学,経済政策

 

可変保険料方式と金融機関の評価格差‐預金保険の日米制度比較を睨んで‐,大森拓磨,Working Papers(新潟大学経済学会),No.第89,2008年08月,日本語

研究論文(その他学術会議資料等),単著,理論経済学,経済政策

 

現代中国における金融経済の変化と米中関係,大森拓磨,アソシエ,No.第20, pp.98-108,2008年04月,日本語

研究論文(学術雑誌),単著

 

The financial change of Modern Chinese Economy and its global impact (especially U.S.A),Takuma OMORI,Third Conference of International Forum on Comparative Political Economy of Globalization, "Neo-Capitalism, Japan and the Dynamics of Global Capitalism: Theory,

History and Methodology",2007年09月,英語

研究論文(国際会議プロシーディングス),単著

 

黎明期アメリカ・インディアナの銀行制度 1814-1832年‐アメリカ連邦準備制度の新たな嚆矢として‐,大森拓磨,経済理論(和歌山大学経済学会),No.第332, pp.117-148,2006年07月,日本語

研究論文(大学,研究機関紀要),単著,理論経済学,経済政策

 

ニューヨーク・セイフティ・ファンドの盛衰-アメリカ連邦預金保険制度の淵源(2・完),大森拓磨,経済学論集(東京大学経済学会),Vol.第69,No.第3, pp.36-72,2003年10月,日本語

研究論文(大学,研究機関紀要),単著

 

ニューヨーク・セイフティ・ファンドの盛衰-アメリカ連邦預金保険制度の淵源(1),大森拓磨,経済学論集(東京大学経済学会),Vol.第69,No.第2, pp.22-60,2003年07月,日本語

研究論文(大学,研究機関紀要),単著

 

サフォーク・システムの生成-一商業銀行における中央銀行的な機能の内生過程,大森拓磨,経済学論集(東京大学経済学会),Vol.第68,No.第3, pp.55-86,2002年10月,日本語

研究論文(大学,研究機関紀要),単著,理論経済学,経済政策

 

サフォーク・システムの起源,大森拓磨,金融経済研究(日本金融学会編),No.第18, pp.85-98,2002年03月,日本語

研究論文(学術雑誌),単著,理論経済学,経済政策

 

米中経済と世界変動」(岩波書店刊 シリーズ現代経済の展望)著者