第44回 「2016年 中国の展望」

 

加藤青延 (かとう・はるのぶ)

 

NHK解説委員

 

 

略歴 1954年    東京生まれ

   1978年3月  東京外国語大額中国語科卒業

       4月  NHK入局

   1987年~1989年 香港支局長

   1989年~1991年 北京支局特派員

   1991年~1993年 NHK東京国際部デスク

   1993年~1996年 北京支局長

   1996年~2002年 NHK東京アジアセンター 副部長

   2002年~2006年 中国総局長

   2006年~2014年 NHK放送総局解説主幹

   2014年~      NHK解説委員

 

概要

 

南シナ海での強引な岩礁埋め立てや異常な軍備増強などをめぐり米国など外との摩擦が強まる中、経済減速や環境破壊など内部にも大きな矛盾を抱える中国は、2016年どうなるのか。

共産党の独裁体制を維持するために、習近平政権はどんな手に出てくるのか。日本とのかかわりはどうなるか。

 

これまでに見えてきた様々な状況をもとにその行方を分析する。

 

聴講風景

 

 

1.経済問題が最大の難題 →外交、安全保障にも影響

   ・抱える課題

    過剰生産による在庫の山  地方政府が抱える不良債権

    貿易・投資にブレーキ 通貨人民元の下落 株式市場の下落

    産業事故の多発 天津爆発 深圳土砂崩れ  環境破壊

   ・目指す目標

    経済構造改革→投資中心の経済から消費中心の経済

           労働集約性工業 →高度技術・イノベーション

           国有企業中心経済→民間への開放←国有企業の抵抗

           対外進出政策 海外企業の買収 AIIB(アジア

                                                  インフラ投資銀行)

           人民元国際化

   ・第135か年計画(2016~20年) 3月全人代で採択

    目標:2020年のGDPと所得水準を2010年比で2倍増

       (6.5%以上の成長が必要)

       農業の近代化、国有企業の改革 戸籍制度の改革深化

       温暖化対策 風力、太陽光、地熱、原子力による発電の発展

       一人っ子政策廃止

   ・共産党の指導強化

 

 

2.軍事体制改革 →共産党の指導強化 勝てる軍隊 汚職腐敗摘発

   (旧) 中央軍事委員会――4総部 総参謀部 統括 作戦 指揮

                    総政治部 宣伝 人事 規律委

                    総後勤部 兵站 施設建設

                    総装備部 兵器開発・調達

   (新) 中央軍事委員会――7部  軍事委員会弁公室

                    軍事委員会連合参謀部

                    軍事委員会政治工作部

                    軍事委員会後勤保障部

                    軍事委員会装備発展部

                    軍事委員会訓練管理部

                    軍事委員会国防動員部

               3委員会 軍事委員会規律委員会

                    軍事委員会政法委員会

                    軍事委員会科学技術委員会

              5直属機関 軍事委員会戦略計画弁公室

                    軍事委員会改革と編制弁公室

                    軍事委員会国際軍事協力弁公室

                    軍事委員会会計監査署

                    軍事委員会機関事務管理総局

   →軍事委員会の下で4総部がかなり独立した組織から

             全て軍事委員会の管理下に置く組織へ

   →政治宣伝部門と人事部門、規律検査部門を独立させる

   →統合運用の強化

   軍備の増強、近代化 自国製空母2隻の建造 新型潜水艦の建造

             高性能戦闘機の配備 高性能対空ミサイル配備

             衛星監視システム強化 電子電磁波技術の強化

   対外軍事施設の展開 真珠の首飾り 羅先 ギリシャ

 

 

3.習近平指導体制の強化

    ・2017年の党大会に向けた人事・調整 習近平主席への権力集中

    ・反汚職キャンペーン 虎・ハエ・狐

    ・メディアに対する統制強化  新旧メディアの統合 ネット管理

    ・反政府運動の取り締まり強化 民主化運動 公民権運動

                    少数民族独立運動

    ・党内抵抗勢力、地方政府、軍、国有企業、既得権益層

講演中の加藤先生

 

 

4.対外政策

     →強硬から協調へ変化か(経済的理由)

  ①対台湾政策

     ・蔡英文総統・民進党体制への対策

     ・台湾の人々の「台湾人」認識と中国大陸に対する不安懸念

     ・台湾で生じた格差問題

  ②対米政策

    ・大統領選挙の年を見越した柔軟な対応

    ・オバマ政権との課題

      南シナ海問題、台湾問題、人権問題、サイバーテロ問題

      貿易格差問題、人民元国際化問題、AIIBTPP問題

  ③対北朝鮮政策

    ・「水爆実験」強行の北朝鮮への対応 核開発放棄は可能か

    ・国際的経済制裁にどこまで同調

    ・金正恩第一書記の訪中問題

  ④対ロシア政策

    ・兵器購入はどこまで進むか

    ・対米、対EUでの協調と矛盾

  ⑤対東南・南アジア政策

    ・南シナ海問題の懐柔

    ・インフラ投資の強化 海のシルクロード構想

  ⑥対中東政策

    ・対サウジアラビア

    ・対イラン

  ⑦対ヨーロッパ政策

    ・経済中心の交流強化

    ・人民元決済市場をどこに置くか

    ・原発輸出問題

 

 

5.対日政策の展望

    日中接近の方向  経済的補完関係

             依然巨大な市場

             深刻化する中国の環境問題

             高齢化問題への対処

    日中反発の方向  日米同盟の強化

             東シナ海をめぐる対立

             南シナ海をめぐる問題への関与

    4つの政治文書 日中共同宣言

       (1)1972年の日中共同声明  台湾問題

       (2)78年の日中平和友好条約  紛争の平和解決

       (3)98年の日中共同宣言    村山談話の遵守

       (4)2008年の「戦略的互恵関係(せんりゃくてき

          ごけいかんけい)」の包括的推進(ほうかつてき

          すいしん) に関する日中共同声明

      東シナ海を平和の海に4項目の共通認識

      1 双方は,日中間の四つの基本文書の諸原則と精神を遵守

        し,日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていくこと

        を確認した。

      2 双方は,歴史を直視し,未来に向かうという精神に従い,

        両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認

        識の一致をみた。

      3 双方は,尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態

        が生じていることについて異なる見解を有していると認識

        し,対話と協議を通じて,情勢の悪化を防ぐとともに,危

        機管理メカニズムを構築し,不測の事態の発生を回避する

        ことで意見の一致をみた。

      4 双方は,様々な多国間・二国間のチャンネルを活用して,

        政治・外交・安保対話を徐々に再開し,政治的相互信頼関

        係の構築に努めることにつき意見の一致をみた。

 

終了、質疑応答では、熱心な参加者からの質問に懇切丁寧な回答解説を頂き、時間超過となったほどでした。

懇親会参加者の皆様

 

 

 

加藤先生 著書

 

  「中国仰天 ボツネタ㊙ネタ」 日本僑報社(自著)

「中国の軍事力」 蒼蒼社 (共著)

「中国農村崩壊」 NHK出版 (冒頭執筆)

   「21世紀 中国はどう変貌するか」 NHK出版 (共著)

「中国 12億の改革開放」 NHK出版(共著) 

 

主な出演・制作番組

 

   特集番組「民衆が語る中国・激動の時代~文化大革命を乗り越えて~

  (BS特集 8月に総合テレビでも放送予定ギャラクシー賞 受賞)

   NHKスペシャル 中国シリーズ

          (1994年、2004年の大型シリーズに参画) 

   クローズアップ現代 「空白の3時間 天安門事件の真相」

   NHKスペシャル「アジアの火薬庫 南沙諸島」

1992年ギャラクシー賞月間賞受賞)

   NHK特集 「外資を導入せよ」CITIC栄毅仁会長密着取材

   NHK特集 「三蔵法師になった日本人」

   NHK特集 「追跡!核燃料輸送船」(モンテカルロテレビ祭3賞受賞)