第35回 「バングラデショ農村地域におけるエコサン・トイレの普及活動                     ~サバイバルからサステナブルへ?」

平成27年1月26日(月) PORTA神楽坂 18:30~20:30

高橋 邦夫 氏 (たかはし くにお)



NPO法人 日本下水文化研究会

                        理事


バングラデシュは世界の最貧国の一つです。ワイロ政治の混乱、脆弱な基盤整備、それらのもたらす貧困の悪循環は容易に改善されません。資源は水と土地とマンパワーしかありません。

そうした国において飲み水の安全性の確保や排泄物の衛生改善は生活改善の基幹であることは言うまでもありません。

トイレによる衛生改善、排泄物の資源利用などがこうした貧困の悪循環からのブレークスルーとなりうるかどうかをテーマとした経験を述べたいと思います。

国土面積:14.76km2

流域面積:172km2

人口:約一億6千万人

人口密度は日本とほぼ同等。

国語:ベンガル語

宗教:ムスリム(人口の90%)

国境:9割以上がインドと接する。

   インパール/コヒマはシレットから

   約100kmに位置する。

1905年:ベンガル分離令

1947年:印パ分離独立

1971年:パキスタンから独立

1977年:ダッカ事件

1999年:国際母語記念日(ユネスコ)


雨季(5月-9月:毎晩熱帯夜が続く)・乾季(10月-4月:好天のため放射冷却)

雨季に起こりやすい停電(電化率:都市域90%以上、農村地域30%程度)

平均国土標高:20フィート(7m程度)1998年洪水では国土の70%が水没した。

ラジャヒのガンジス川(MAY/2008):日没のガンジス川の風景で有名な都市

インド政府:1975年インド国境にハラッカ堰を建設、乾季はインドが占有し、洪水期に放流。月や星が出ている夜中に洪水が起こることがある。


From The daily star, Dhaka Saturday September 18, 2012

人口の推移・構成(何故多くの人口を養えるのか?)

村の子供たち(湧いて出てくるような印象を受ける)

米カレンダー

1960年代:南アジアの奇跡

品種改良/化学肥料/農薬/灌漑整備

      ⇒

農地の劣化/有機物含有率の低下/生産高の停滞/化学肥料の不足と高騰

農村の暮らし

Trends in under-five mortality rates, 1960–2010

水系伝染病撲滅のための井戸掘りとトイレ整備(1980年代国連等)

チューブウェル(手押しポンプ) と ピット・ラトリン

地下水の砒素汚染問題(1993年発見)
砂ろ過(PSF)、AIRP、深井戸、雨水タンクの導入
水源:地下水から表流水へ

給水車による給水と運搬(水源の無い沿岸地域:20103月)
飲料水の運搬は女性/子供の仕事:ポット20kgの運搬は過重な労働である

主産業と国家予算の枠組み

RMGReady-made Garment)はこの国は主産業である。約2兆円(US$20Billion)の外貨を生み出す。

・海外出稼ぎ労働送金とともに外貨獲得の希少手段である。

・そして海外援助助成金を併せることでこの国の経済は成り立っているのである。年間予算額約US$40Billion

『縫製工場の労働者の暴動はここ数年来頻発している。 余りの低賃金に対するベースアップや、数か月にわたる賃金の未払いなどへの切実な要請である。

 政府は2010年最低賃金3000BDT/月を勧告したが何とその背景には平均賃金が1662BDT/月であったという嘘のような事実があった。』 

 ワイロと官僚主義  From The daily star, Dhaka Saturday September 15, 2010
ACC(ANTI-CORRUPTION-COMMITTEEの活動を皮肉ったもの)

バングラデシュ農村地域のトイレの状況
ピット・ラトリンは低寿命/汚物の流出/最終処分が無い

~エコサン・トイレ導入の背景と目的~

1.トイレ普及と衛生改善(水系伝染病罹病の削減) 

  衛生的なトイレの普及率(2008年現在) 80%超:政府発表

  一方、ユニセフ見解では40%である

2.飲料水のヒ素問題(飲料水源の確保)

  井戸水(手押しポンプ)から表流水・雨水利用等への切り替え

3.農地土壌の劣化(し尿資源の循環利用)

  化学肥料から有機肥料への転換

4.地域に適合するトイレの普及(材料・エネルギー・低コスト)

           

       エコサン・トイレの提案と導入

                    講演中の高橋先生

エコサン・トイレ(し尿分離型トイレ)の導入


進国向けのバイオトイレ


問題の明確化


実施計画(資源利用)


衛生工学的合理性の検証(資源利用)


衛生工学的合理性の検証(衛生改善)

                      聴講風景


生活満足度(数量化理論第二分類による分析結果)


水系伝染病羅病頻度・医療支出


水系伝染病による医療支出費(BDT/世帯・年)


エコサン・トイレとピット・ラトリンとの便益評価


モニタリング結果の経過

活動(貢献)の仕方 必要条件、十分条件

必要条件:それは工学的合理性にある。エコサン・トイレの活動に示したように、追加的便益を明示し、理解を得ることである。

十分条件:それでは、必要条件を全うしたところで、自立的な展開が可能かといえばそうではない。すなわち受容性が備わなければ不可能なのである。

  受容性とは、それに関わる多くの住民にとっての選好に適うことである。それでは、選好を記述する要素とは何か。勿論、必要条件もその一部を成すとして、個々の住民が、また集合体としてのコミュニティが追加的便益を顕在化したものとしての認識に至ることなのである。さらに言えば、便益の顕在化とは要するに目の前にある利得であればよりわかり易いのである。


エコサン・トイレの生産した乾燥肥料のCBOCommunity Based Organization)トイレ組合による販売

活動(貢献)の仕方 必要十分条件

 必要、十分条件を一つ一つ確認し積み上げていくためには時間が必要となる。“継続は力なり”とはその側面を集約した表現であろう。

 継続するためにはモデルが必要となる。この場合、モデルとは活動展開の道筋に対する一貫したイメージと呼んでも良いだろう。

 そしてモデルには、多分、規範的なものは無いであろう。なぜならそれは仮説であるからである。そのためには、知っている・知らない、わかる・わからない、できる・できない、という素朴な自問自答を繰り返すことしかないのではないか。知ったかぶり、わかったふり、できるふりは、仮説の歪曲であり、結局、おせっかいにならざるを得ないであろう


ネパールの山村(国土面積は同等、人口は3千万人)

                      おわり



      当会名物 講演後の懇親会兼異業種交流会兼講師を囲む会