第28回 「オバマ大統領訪日」をどう読む -日米同盟の将来ー

平成26年4月21日(月) PORTA神楽坂 18:30~20:30

 

川上 高司 氏 (カワカミ コウジ)

 

 

拓殖大学 海外事情研究所長・教授 大学院国際開発研究科安全保障専攻主任

 

【略歴】

 

1955年熊本県生まれ。大阪大学博士(国際公共政策)Institute for Foreign Policy Analysis(IFPA)研究員、()世界平和研究所研究員、防衛庁防衛研究所主任研究官、北陸大学法学部教授を経て現職。この間、ジョージタウン大学大学院(ペンタゴンプログラム)留学、RAND研究所客員研究員、参議院外交防衛委員会調査室客員調査員、神奈川県参与(基地担当)()国際間題研究所客員研究員。

 

現在、拓殖大学海外事情研究所所長・教授の他、中央大学法学部兼任講師、NPO法人外交政策センター(FPC)代表、()国際情勢研究所委員、フレッチャースクール外交政策研究所研究顧問などを兼務する。

 

主な所属学会は、国際政治学会、アメリカ学会、国際安全保障学会、日本政治学会、ISAIISS 

 

 

Ⅰ Washington DC報告  (2014/3/18-27) 

 

1.ワシントン・シンクタンクの「今」

  ーChina, Koreanの影響下ー

   【民主党系】ブルッキングス研究所、新米国安全保障センター(CNAS)、

    スティムソン・センタージョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)、

    カーネギー平和財団、米外交問題評議会(CFR)

   【保守系】ヘリテージ財団、米戦略研究所(CSIS)、アメリカン・エンタープライズ研究所

    (AEI)

   【国防総省系】RAND研究所、米海軍分析研究所(CNA)、外交政策分析研究所(IFPA)

   【交流財団】ジャーマン・マーシャル・ファンド(GMF)、マンスフィールド財団、

 

. China Lobby, Korean Lobby

  (1)China Lobbyの現状

  (2)Korean Lobbyの現状

  (3)Japan Lobby(public diplomacy)の評価

 

3.米議会の動き

  Japan Caucus(日本議連)

  3/24日、Japan Caucus発足。62名。共和党デビン・ニューネス (CA22区選出・40

  )、民主党フアキン・カストロ (TX20区選出・39) 。環太平洋連携協定 (TPP)

  推進派、日本の参加は米国の利益になると訴える。

経済やエネルギーのほか、安全保障、アジア地域の安定、環境など幅広い課題で日米協力を促進し、共通の利益を追求することを目標。

  ダニエル・イノウエ元上院議員(知日派)が2012年12月死去。日本政府の新たなパイプづくり。

  (*コーカスは党員集会や議員有志団体を意味する)

 

 安倍総理の靖国参拝と米国の反応 

 

1.安倍総理靖国参拝と米国の反応

2014年12月26日安倍総理の靖国公式参拝。

中国の巧妙な宣伝戦  米国内での世論操作に熟知していた中国は、安倍総理の靖国参拝に対して「強い憤り」を表明したが軍事的手段ではなく、「宣伝戦」に訴え日本包囲網をつくり上げた。

中国は、安倍総理が戦後秩序(サンフランシスコ体制)への挑戦者であるとレッテルを貼った。

その戦略は功を奏し、韓国はもとよりロシアも「遺憾だ」と同調し、欧州連合(EU)までも「中韓との関係改善につながらない」と非難した。

 

さらにアメリカまでもが「日本の指導者が近隣諸国との関係を悪化させるような行動を取ったことに、米国政府は失望している」との声明を出した。

  

. Washington DC での

  「安倍政権の評価」分析

  安倍総理の「靖国参拝」を歴史問題」と結びつけ、安倍政権にダメージを与える中国(および

  韓国)の「情報戦」は成功しており、その結果、安倍政権は窮地にたたされている。

  安倍政権への評価は8割から9割の有識者および政府関係者の間でnegativeである。米国では

  徐徐にではあるが「Anybody but Abe」という声が出つつある。

  これに対する外務省を中心としたWashington DCにおける言論・情報戦の「巻き返し」政策

  は現在のところ戦略がないのではないか、功が薄く、“too late, too little”という声も聞かれ

  る。

  安倍総理の靖国訪問を当然だとpositiveに見る見解もあるが極めて少数派である。たとえば、

  共和党スタッフは「日本の歴代総理は靖国訪問を行ってきたし、米国も日本の国内問題、個人

  の自由として言わないのが慣例であった」と述べる。

 

 「オバマ大統領訪日」をどう読む

 

1.「オバマ大統領訪日」スケジュール

  <423>

  夜、安倍総理晩餐会? 深夜来日?

 

  <424日>

  1030 日米首脳会談、共同記者会見

  1900 皇居で宮中晩餐会

  <韓国、フィリピン、マレーシア>

  (* ミッシェル夫人同行せず。夫人は3/20から2人の子供連れで1週間中国滞在)

  (* 過去40年間、国賓として訪日大統領は5人。夫人同伴無しはフォード大統領のみ。

    前回は18年前のクリントン大統領で夫人同伴。)

  (* 迎賓館宿泊せず都内ホテルへ宿泊)

 

2.安倍総理「オバマ招聘」の目的

  <招聘目的>

  靖国参拝でダメージを受けた日米関係修復

  日米同盟の再保証をオバマから引き出す

  <招聘努力>

314日 河野談話、見直さず

324日 G8ボイコット

      ウクライナへ1,500億円支払い

325日 日米韓首脳会談

4  5  ヘーゲル国防長官来日

418日 バイデン副大統領との電話会談

 

3.菅官房長官

  -日米首脳会談内容-

   来るべき日米首脳会談に関して菅官房長官は「厳しさを増す日本周辺の国際環境を 

 踏まえ、力強い日米同盟というものを再確認し、さらなる具体的な協力を打ち出す

 予定だ」とし、

アジア太平洋の繁栄という観点からTPPを含め、日米の様々な協力関係について

 議論される述べた(菅官房長官4日閣議後会見) 

 

 「オバマ大統領訪日」の3つの目的

 

1.Reassurance(再保証、安心させる)

2.TPP

. 安倍総理の評価

4.安倍政権の右傾化阻止(日韓協調、日中紛争回避) 

 

1.Reassurance(再保証、安心させる)

  米国が影響力拡大を図る中国に対抗する「意思がある」ことを示し、「懐疑的な

  同盟国」の指導者を安心させる。

  軍事費削減の中でもリ・バランスを行う。

  シリア攻撃回避、アジア歴訪中止、ウクライナ弱腰外交 による 同盟国の不信感を払拭する。

 

  <But オバマの真意> 

  米中関係の緊張を高めることなく同盟国を安心させ、同時に中国の行動をいかに抑えられるか。

 

  オバマのウクライナ弱腰外交の影響

  ロシアのクリミア半島編入強行と、それに対する米国の選択肢が限定的

  (=宥和外交)。

  中国が、それを米国の「宥和外交」として学んだ場合、東シナ海と南シナ海の

  領有権問題で軍事行動に出かねないとの不安が同盟国に現れている。

  自国が中国の脅威にさらされた場合、「米国は米中関係へのダメージを抑える

  ような行動を取るのではないか」との疑念が存在する。

  これらをオバマ大統領が払拭する。

 

2.TPP

  オバマ大統領は「TPP締結が可能だ」ということを米議会に対して示さねばならないため、

  「日本の譲歩」が必要。11月に中間選挙が控えている。

  TPPに関して米民主党議員から賛同を得ねばならない。共和党はTPPに賛成。

  懸念事項は、日本が「日豪EPA」を先行させ、日本市場で米国産牛肉が豪州産よりも

  価格で不利になる。TPPで米国は焦って譲歩することはなく、「米国より豪州を優先

  した」とオバマ大統領は考える。その結果、米側はより大きな譲歩を日本に迫りかねない。

  ごく最近スタートした米議会の[日本議連]の事務局長は「日本がTPPすることは共和党

  にとり非常に重要だ」と述べる。 

 

3.安倍政権の評価

  オバマ大統領は安倍総理の個人的な評価をすることが考えられる。

  駐日アメリカ大使館からの分析結果や、国務省、国防総省等からのreportに基づき自分の目で

  安倍総理および自民党政権下での日本を分析することになろう。

  それは、対中宥和政策をとるオバマ第二期政権にとり、安倍政権が歴史問題や領土問題で中国や

  韓国と争うことを避けうるのか-。もし緊張が継続すれば、安倍政権に対する方針を米国政府と

  しては考えることになると考えられる。

 

4.安倍政権の右傾化阻止

  (日韓協調、日中紛争回避)

  オバマ大統領から日米間の懸案事項である、歴史認識に関して、もし安倍総理から話を切り出し

  た場合には、「歴史論争にこれ以上踏み込むことは、これから長期にわたって進めていく

  日米同盟の双方の努力を阻害する」という回答があると考えられる。

  米国が歴史紛争に踏み込むことは、避けると考えられるからである。

  オバマ大統領は、「戦略的な文脈からオバマ大統領は、過去についての問題よりも、もっと

  グローバルな日米関係への協力を求める」と考えられる。

                         講演に聞き入る参加者
                         講演に聞き入る参加者

 

Ⅴ 安倍総理への提言 

 

1. オバマ大統領が苦慮するウクライナ情勢への対応や中東(シリア、イラン)への日本の協力は重要

  となる。 

 

2. 米国の軍事費削減で薄くなる「リ・バランス戦略」を日本が補完をすることが重要。 

 

3. その際、韓国との関係を改善し、中国との尖閣諸島をめぐる軋轢を回避する努力が必要である。 

 

4. 閣僚の不用意な発言、靖国参拝を控えさせると言明すること。 

 

5. 歴史問題、慰安婦問題の棚上げを示唆すること。 

 

                         質問する参加者
                         質問する参加者

 

懇親会風景

 

川上先生著書

『日米同盟とは何か』(中央公論社、2011)

『現代アジア辞典』(文眞堂、2009)

『アメリカ世界を読む』(創成社、2009)

『アメリカ外交の諸潮流』(目本国際間題研究所、200710)

『グローバル・ガバナンス』(目本経済評論社、2006)

『米軍の前方展開と日米同盟』(同文舘、2004)、『米国の対日政策』(2001年、同文舘出版)

『国際秩序の解体と統合』(東洋経済、1995)

他多数。

 

 

川上先生ホームページ

http://www.tkawakamidreams.net