第26回 溶解する中国への備え

平成26120日(月) PORTA神楽坂 18:3020:30

 

川上 高司 氏 (カワカミ コウジ)

拓殖大学 海外事情研究所長・教授 大学院国際開発研究科安全保障専攻主任

 

【略歴】

1955年熊本県生まれ。大阪大学博士(国際公共政策)Institute for Foreign Policy Analysis(IFPA)研究員、()世界平和研究所研究員、防衛庁防衛研究所主任研究官、北陸大学法学部教授を経て現職。この間、ジョージタウン大学大学院(ペンタゴンプログラム)留学、RAND研究所客員研究員、参議院外交防衛委員会調査室客員調査員、神奈川県参与(基地担当)()国際間題研究所客員研究員。

現在、拓殖大学海外事情研究所所長・教授の他、中央大学法学部兼任講師、NPO法人外交政策センター(FPC)代表、()国際情勢研究所委員、フレッチャースクール外交政策研究所研究顧問などを兼務する。

主な所属学会は、国際政治学会、アメリカ学会、国際安全保障学会、日本政治学会、ISAIISS

 

概要: 

中国はなぜ防衛識別圏(ADIZ)の尖閣諸島を含む東シナ海上空に設置したのか。

なぜ、このタイミングなのか。解決策はあるのか。

中国の国内的不安定がますます強くなり、それに比例して軍事的強硬姿勢は強くなると思われる。 安倍政権はどう対処するのか。 また、オバマ政権の出方はどうなるのか。

真相を論じる。

 

PART

世界の警察官がいなくなった世界

1.米国覇権の終焉

オバマ大統領は「米国は世界の警察官ではない」と昨年9月に宣言した。この宣言はシリア攻撃の是非を米議会に一任したスピーチの最後の箇所で述べられたものであった。シリアのアサド政権が化学兵器の全面的撤廃を約束し攻撃は忌避されたのは周知の通りであるが、これを境にアメリカの外交政策は変容する。

では、世界の警察官をやめた米国はどのような外交政策を採るのであろうか。このスピーチの後、オバマ大統領の政策顧問を務めたブレジンスキー元大統領補佐官は「単独で覇権をとれる時代は終わった」とし、米中露間の「共通の利益をめぐる新たなゲーム」(A new game of shared interests)」が始まったと講演した。

ブレジンスキーは著書「Strategic Vision」で米国は19世紀のイギリスの戦略に学ぶべきであり、各国の勢力均衡と仲裁の役割を果たすべきだと説く。そして、東アジアではバランサーとなるべきであり、日中間の歴史問題を解決させることが必要であり両国を和解させることを提示した。

2.米中「宥和時代」

スーザン・ライス大統領国家安全保障担当補佐官は昨年11月21日にオバマ第二期政権のアジア政策の指針を発表した。ここでライスは、残りのオバマ政権の3年間で米国はアジアでより安定した安全保障環境を達成したいとし、中国に「新たな大国間関係」を呼びかけた。これは習近平国家主席が昨年6月の米中首脳会談で呼びかけたに応えたものとなった。

中国の防空識別圏設定と米国の反応

米国のこうした対中政策の宥和政策を確かめるかのように、中国は東シナ海に防空識別圏(ADIZ)を昨年11月23日に設定した。おりしもバイデン副大統領の訪中の直前である。米国は25日にB52戦略爆撃機2機を中国の設定した防空識別圏を飛行させるとともに、12月4日に訪中してバイデン副大統領は「これを認めない」と宣言した。

しかしながら、29日には米国務省は、米民間機に中国の防空識別圏を航行する際に飛行計画を中国当局へすることを促した。これは民間航空機に「飛行計画は提出しないように」と指示した日本政府とは異なる。また、バイデン副大統領は、習近平国家主席に対して日本の求める中国の「防空識別圏の撤廃」は要求せず、「認めない」とトーンダウンする発言をした。さらに、ヘーゲル国防長官は、12月4日「防空識別圏は新しくも珍しくもない。中国が一方的に決めた運用面の手続きが問題だ」と述べた。

3.安倍総理の靖国参拝と米国の反応

そのような中、昨年12月26日に安倍総理は靖国神社の公式参拝を行った。米国の外交政策が明確に転換した後に行われた参拝は、中国の術策にはまってしまった感がある。米国の流れを察知していた中国は、安倍総理の靖国参拝に対して「強い憤り」を表明したが軍事的手段ではなく、「宣伝戦」に訴え日本包囲網をつくり上げた。

中国は、安倍総理が戦後秩序(サンフランシスコ体制)への挑戦者であるとするレッテルを貼った。その戦略は功を奏し、韓国はもとよりロシアも「遺憾だ」と同調し、欧州連合(EU)までも「中韓との関係改善につながらない」と非難した。さらにアメリカまでもが「日本の指導者が近隣諸国との関係を悪化させるような行動を取ったことに、米国政府は失望している」との声明を出した。

                    講演中の川上先生
                    講演中の川上先生

4.アメリカの新孤立主義への回帰と無極化時代の到来

このことは、米国が世界の警察官をやめた証でもある。言い換えるならば、米国の外交政策がジョージ・ワシントン初代大統領以来の伝統的外交政策である孤立主義へと回帰したことを顕している。その結果世界は無極化へと向かうこととなる。

無極化のもとでは「大国間の協調」(コンサート・オブ・パワー)の現象が生まれ、協調してゲームのルール(行動規範)が設定され、その秩序を乱す国への懲罰措置も導入されるとリチャード・ハース米外交評議会(CFR)会長は論じている。「無極化」とは数十のアクターが様々なパワーを持ちそれを行使することで規定される秩序である。各パワー・センターは経済的繁栄と政治的安定をめぐり国際システムに多くを依存するため、大国間の紛争は起こりにくい。

ヘンリー・キッシンジャーは著書『外交』の中で二通りのバランス・オブ・パワーを紹介している。一つは、バランス・オブ・パワーが直接脅かされた場合、弱いパワーへ参加しバランスをとる「イギリス型」である。もう一つは出来る限り多くの諸国と緊密な関係を確立し、重複する同盟関係を作り現状打破国に対してバランスさせる「ビスマルク型」である。

無極化へ世界システムが向かう中、オバマ政権は「ビスマルク型」を採ろうとしている。そして台頭する中国(現状打破国)へは自国のみでバランスができないため、アジア地域の同盟国に肩代わり(バック・パッシング)させるオフショア・バランシングをとる。米国はオフショア・バランサーに留まる限り紛争には出来るだけ巻き込まれまいとすることになり、中国とは戦略的抑制をとり協調関係を維持することとなる。

 

こうして世界の警察官がいなくなった国際社会はパワーの分散化がおこる。そして、共通の利益をめぐり、各国(パワー・センター)は自らに有利な「規範(ノーム)」作りをめぐりゲームを展開することとなろう。公の海と空、宇宙、サイバーといったドメイン(領域)における有利なルール作りを巡るゲームが始まったのである。

 

次の指導者は誰?!

未知の時代に突入した現在、日本にはメッテルニヒやビスマルク型の名宰相の登場が望まれる。

 

米中関係の変遷

 

PART

中国の防空識別圏設定問題と日本の安全保障

 

中国「防空識別圏」を東シナ海設定

}  201311月23日、中国国防省、東シナ海に「防空識別圏」を設定を発表。中国の防空識別圏には沖縄県・尖閣諸島も含まれており、日本の防空識別圏と重なる。

}  公表された識別規則に関する「公告」は「(中国の)防空識別圏を飛行する航空機は、飛行計画を外務省か航空当局に通報するとともに、国防省の指令に従わなければならない」とし、「指令に従わない航空機には武力で防御的な緊急措置を講じる」と明記。

}  領空外にも主権が及ぶような主張。これを認めれば「飛行の自由」の大原則が損なわれ、日本の領土の尖閣諸島上空も含まれ認められない。

防空識別圏(ADIZ)

}  防空識別圏は国際法で確立したものではなく、領空、領土の範囲を定めたものではない領空侵犯を防ぐため領空周辺に設定した空域。国際法でその国の海岸線から12海里(約22キロ)までを「領海」、その上空を「領空」として主権を認めている。

}  他国機が領海上空「領空」を侵犯し領土上空到達まで、旅客機1分強、超音速軍用機数十秒で到達。領空侵犯を確認してから対応すれば手遅れ。従って領空」の外周の空域に「防空識別圏」を設定し、飛行計画の届けのない航空機が防空識別圏に進入した時点で戦闘機で警告を行う。

}  領空侵犯を確認し、指示に従わない場合、空軍力による強制措置(スクランブル)がなされうる。スクランブルは、当該機が防空識別圏に進入する姿勢を見せた時点で行われることが多い。

}  防空識別圏に侵入した時点での軍事力を用いた措置をとる、あるいはとられるような誤解をされるが、防空識別圏は自国の主権の及ぶ範囲ではなく、強制力を用いる法的根拠は全くない

飛行情報区(FIR)

}  国際民間航空機関(ICAO)は、各国が航空管制を担当する「飛行情報区(FIR)を定めている。

}  日本は国交省管轄の福岡FIRに飛行計画が集まっており、防衛省も福岡FIRからの情報で日本のADIZを飛行する航空機を把握している。

}  FIRに入る航空機へは一般的に管制当局が飛行計画を求めるが、ADIZは国際法に決まりはなく、単なる要請。

}  ADIZ20数カ国が設定しているが、中国は強制的要求をする点異なる(「指示に従わねば防御的緊急措置」)

}  対処要領は各国国内法で定めており、国によっては領空侵犯機を撃墜 1983/9のソ連の大韓航空機撃墜

 

                        会場風景
                        会場風景

日本国の防空識別圏(ADIZ

}  日本国の防空識別圏は、防衛庁長官の定める「防空識別圏における飛行要領に関する訓令」(防衛庁訓令第36号)第2条第1で定義。同訓令は、防空識別圏における自衛隊の航空機の飛行要領を定めることで、日本周辺を飛行する航空機の識別を容易にし、対領空侵犯措置(自衛隊法第84条)の有効な実施を目的とする(同訓令第1条)。

}  日本国の防空識別圏は1945年にGHQが制定した空域をほぼそのまま使用。航空自衛隊の対領空侵犯措置の実施空域に指定

}  おおむね、他国との中間線付近に設定された外側線で囲まれる空域から、内側線によって囲まれる空域を除いた空域として規定されている。

}  航空法第99に基づき国土交通省が提供する「航空路誌」(AIPは、有視界飛行方式により国外から防空識別圏を経て日本領域に至る飛行を行う場合、飛行計画を航空管制機関に提出すること事前に提出された飛行計画と異なる飛行を行う場合は航空交通業務機関および自衛隊レーダーサイトに無線通報することを要請。これはあくまで要請であり法的義務ではない

 

中国の防空識別圏(ADIZ)は何が違うのか?!

}  「この空域に入る航空機は中国政府の指示に従わばならない」

・防空識別圏は中国国防相が管理する

・圏内を飛行する航空機は飛行計画を中国外務省または航空当局に提出する義務

・圏内の飛行機は国防省の指示に従わねばならない

・指令を拒み従わない航空機に対し、中国は防御的な緊急措置を講じる

 いわばその空域は中国の領空であると同様の対処を取るように規定。したがって、「防空識別圏」ではなく、自国の空域であると宣言したも同然。

これは「公海上空の飛行の自由」という国際的認識違反

中国の能力

}  今回設定した防空識別圏を技術的に守る力が中国にあるかどうかは測りきれない部分もある

}  広大な海域・空域に中国空軍機が常時進出して対処できるのか?

}  海軍航空隊では対処可能な機種を十分保有していない

}  統合運用の概念が浅い人民解放軍が、空軍の警戒管制部隊の統制下で海軍航空隊を運用するのか?

          ↓

}  *中国の常套手段「形だけ整えて高圧的態度に出る」

}  *能力以上のことをやる?

 

52米戦略爆撃機、中国防空識別圏飛行(1125日)

▽米空軍B52戦略爆撃機2機が中国東シナ海上空防空識別圏を飛行(25日夜、日本時間26日朝)

      中国に対する直接的な挑戦

▽グアム島のアンダーセン空軍基地所属のB52の飛行は、以前から計画の演習「コーラル

・ライトニング」の一環。

B52は爆弾など兵器装備せず、護衛機も同行せず。

▽中国側が求める事前通告は行わなかった。

▽ホワイトハウス、アーネスト副報道官は

「中国が先週末に発表した防空識別圏設定方針は、いたずらに挑発的だ」

                     (The Wall Street Journal, 20131127)

米航空3社、中国に飛行計画提出「米政府助言に従い」(1130日)

}  中国が東シナ海に設定した防空識別圏(ADIZ)をめぐり、米航空大手3社(デルタ、ユナイテッド、アメリカン)米政府の助言に従って飛行計画を中国当局に事前提出。(デルタ航空は、談話発表の数日前から飛行計画を提出。その他2社については、いつ提出を始めたかは不明)

}  日本は政府の要請で日本航空各社は中国の要求に応ぜず。日米の足並み揃わず!

}   米国務省は29日、「米政府は、外国が出した航空情報(NOTAM)に従って運航することを一般論としては勧める」と談話を発表。米政府当局者は「予期せぬ衝突が心配される」との理由で中国の要求に従うよう促したとしており、3社とも、飛行に影響が及びかねないと懸念。

}  その一方、国務省当局者は「航空会社への要望は、米政府が中国のADIZ設定に伴う要求を受け入れたことを意味しない」とも指摘。

}  米軍はB52爆撃機を通告なしに飛行させた。米国防総省当局者は「(中国のADIZの地域で)引き続き通常通り任務を続けていく」と述べるなど、中国のADIZには従わない (121日)

}  NSC「米政府は中国ADIZを認めず、民間は民間の判断にまかせる」と結論(米政府関係者)

【東京】バイデン副大統領、中国のADIZ設定を非難(123日)

}  バイデン米副大統領は123日、中国が東シナ海上空に新たに防空識別圏(ADIZ)を設定したことを強く非難し、「見込み違いやミスが起きる可能性が高すぎる」と警告。

【北京】バイデン副大統領、中国の防空識別圏認めず(12月4日)

}  バイデン米副大統領は124日、習近平中国主席と会談し、中国が東シナ海上空に新たに設定した防空識別圏(ADIZ)について、米国はこれを認めないとし、中国政府が地域の緊張を和らげるよう期待していることを伝えた。

}  バイデン、習ともに両国公式発表で識別圏につき直接の言及をせず。しかし、2回の会談と晩餐会でこの問題を話し合った

}  防空識別圏について「副大統領は米側の立場を詳細に説明。米国は今回のADIZを認めておらず、深い懸念を抱いていることを示唆した」とし、さらに中国に緊張緩和に向けた措置をとることを希望する旨伝えた。

}  米側が(日本政府の求める)ADIZの撤回を中国に要求せず、代わりにADIZ規制に従わない飛行機についてどのように対処するつもりかを明確にするよう求めたとみられる。

【ソウル】防空識別圏、韓国も拡大へ バイデン副大統領が容認 (126日)

}  アメリカのバイデン副大統領は126日、訪問中の韓国で朴槿恵大統領と会談し、韓国の防空識別圏拡大を認める考えを示した。

}  米韓双方は今後、防空圏問題について緊密に協力していくことにした。尹氏はバイデン副大統領の発言について、「現時点で韓国側の詳細な説明や努力について評価したことに含意があることに注目してほしい」と説明した。朴大統領は国益を考慮し、中国の防空圏に含まれている韓国南西部の離於島と馬羅島、南東部の鴻島の上空まで韓国の防空圏を拡大することが不可避であることを説明し、バイデン副大統領は「緊密な協議」を前提に一定の理解を表明したとみられる。(聯合ニュース)

米と温度差、戸惑う政府=中国防空圏に苦慮 127(時事通信社)

}  中国が東シナ海に防空識別圏を設定した問題で、日本政府が米国との温度差に戸惑っている日本が「全く受け入れられない」(岸田文雄外相)と公言してきた防空圏設定について、米側は設定自体は問題視せず、運用を改善させることに力点を置く姿勢を鮮明にし始めた。

}  「中国側の立場を認めてしまうことになりかねない」。外務省幹部は6日、中国に防空圏の運用改善を求める米国の対応に強い懸念を示した。

}  ヘーゲル米国防長官は4日の記者会見で、「防空圏自体は新しくも珍しくもない」として、むしろ中国が一方的に決めた運用面の手続きが問題だと指摘。

}  バイデン副大統領も3日の安倍晋三首相との会談で、日本が主張していた防空圏の「撤回」には触れず、中国措置を前提に衝突回避のための危機管理メカニズムの構築を求めた。

}  日中間の危機回避の仕組みづくりについて、中国は理解を示しているが、日本側は対応を決め切れていないのが実情だ。「中国は自分たちが設けた防空圏を前提に既成事実化を図る意図がある」(政府関係者)と警戒しているためだ。

}  中国が一度設定した防空圏を撤回すると期待する見方は皆無に等しく、政府は「撤回」を求める原則論と、「安全」を優先する現実論の間で苦慮する場面が続く。

韓国:防空識別圏拡大を発表 1208 

}   韓国国防省は8日、東シナ海で中韓両国が管轄権を争う暗礁、離於島(イオド)を含む地域まで防空識別圏を拡大すると発表。15日から施行。中国の離於島を含む防空識別圏設定への対抗措置。離於島周辺は日本の防空識別圏にも含まれる。日中韓3国の防空識別圏が重なり、外交上の新たな懸案となる。

}   拡大は、民間機の航空管制を韓国が担当する空域に合わせる形で決定。民間機は管制当局に飛行計画を提出しているので、拡大によって新たな義務は生じない。

}   同当局者は、中国が自国設定した防空識別圏を飛行する民間航空機に飛行計画提出を要求することにつき「民間航空会社が安全のために必要な措置を自ら取ることはできる。今後、関係省庁で検討する」と述べた。

}   韓国政府はこれまで、自国の航空会社に飛行計画提出に応じないよう求めていた。防空識別圏拡大で中国への対抗姿勢をアピールしつつ、民間航空会社が中国の要求に応じることを認めることで、中国側の反発を抑えたい考えだとみられる。 韓国の朴槿恵大統領は6日、バイデン米副大統領に防空識別圏拡大に説明し、バイデンは「韓国の努力を評価する」とした。韓国は、中国が防空識別圏に離於島上空を含めたことに反発。先月28日の中韓国防戦略対話で変更を要求したが、中国に拒否されていた。                         毎日新聞

米中軍艦が接近、衝突回避 125

▽ 米海軍のミサイル巡洋艦「カウペンス」が今月5日

南シナ海の公海上で中国海軍の艦船との衝突を避ける回避行動を取る

▽ カウペンスが公海上を航行中、中国の艦船が突然、空母「遼寧(りょうねい)」を含む中国海軍艦の編隊から離れ、カウペンスに接近。カウペンスは接近しすぎだと無線で警告したが、中国の艦船は停止せず。

▽ 中国の艦船がカウペンス船首から約450メートルの距離まで接近したため、カウペンスの艦長は「全面停止」の命令を出した。その後、中国の艦船はカウペンスの前を通過した。「海上で衝突を避けるための回避行動を取るのは異例」と付け加えた。

▽ 今回の事件は平和的に解決されたが、中国は最近、公海を含む地域の領有権を主張したり、防空識別圏を設定するなど、強硬な姿勢を見せており、米国や周辺国との緊張が高まっている。

                                   (CNN 2013.12.14)

中国の防空識別圏(ADIZ)設定の意図

<Q1: ADIZ設定は国内政治と絡んでいた? → NO>

△ 習近平国家主席がADIZ設定を決断しGo Signを出した

△ 習近平国家主席は党書記長選出(201211月)以前 から東シナ海の問題対処の新設委員会

の責任者に就任。

<Q2: ADIZ設定の理由は?>

△西太平洋での覇権確立を一歩進めるための措置

ADIZ設定は考え抜かれた中国の長期戦略の一環

Q3: 長期戦略とは?>

△法律戦(Law fare=Law Warfare)の一環!

    = 「戦争の武器として法律を利用すること」

     (チャールズ・ダンラップ デューク大学教授、2001)

    国際司法裁判所に領土問題(尖閣)を持ち込んだ場合、実行支配している側に勝ち目がある

 

中国の防空識別圏(ADIZ)設定の意図①

中国のADIZ設定は「地域覇権」プロセスの第一段階

}   「中国のADIZを通過する民間機は飛行計画を提出せよ」との要求を各国の航空会社がのめば、中国のADIZを国際的に認知させることとなる。

}   中国は徐々に支配権を確立し、最終的に地域覇権を確立する。地域覇権を握り国家の安全を確保。

}   中国は「陸の国境」は安定したが、「海の国境」は米国や友好国により脅かされている。したがって東シナ海、南シナ海を実行支配できれば、国家安全保障は確保できる。

中国の防空識別圏(ADIZ)設定の意図②

東シナ海の覇権は「台湾併合」に不可欠

}   中国が東シナ海を支配すれば米国による台湾防衛の海上通過阻止、封鎖可能 (A2AD=Anti-Access Anti Denial

}   中国のADIZは、在日、在韓米軍から台湾を巧みに分断

}   中国がADIZ圏内を実行支配していれば在日、在韓米軍機の阻止可能

中国の防空識別圏(ADIZ)設定の意図③

資源・エネルギー確保のため

}   資源エネルギーを外国依存する脆弱性克服のために地域覇権確立が必要

}   中国経済成長に伴い、輸入資源へ依存が高まり、その大半は海路

}   アメリカと同盟国が中国の周辺海域を支配する限り、SLOCSSource lines of code生命線)は危機にさらされる

中国の防空識別圏(ADIZ)設定の意図④

覇権国となる

}   西太平洋の覇権を確立すれば、東アジア以外の地域に国力を振り向けられる

}   アフリカ~ペルシャ湾、ヨーロッパ、中南米等の権益を拡大

}   何年にもわたり、小さな対立で有利な結果を積み上げ、覇権を目指す⇒ 着実に影響力を拡大!

}   アメリカも米西戦争以降徐々に影響力を拡大し覇権国となる

}   中国はADIZを徐々に台湾、東シナ海、南シナ海と広げ、覇権を確立するという戦略 

}   第一列島線の内側の海域を確保する

 

今後の対応

}   中国は防空識別圏を南シナ海でも引く可能生大。

}   米国や韓国のみならず、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国などとも緊密に連携をとる必要がある。

 

 

川上先生著書

『日米同盟とは何か』(中央公論社、2011)

『現代アジア辞典』(文眞堂、2009)

『アメリカ世界を読む』(創成社、2009)

『アメリカ外交の諸潮流』(目本国際間題研究所、200710)

『グローバル・ガバナンス』(目本経済評論社、2006)

『米軍の前方展開と日米同盟』(同文舘、2004)、『米国の対日政策』(2001年、同文舘出版)

『国際秩序の解体と統合』(東洋経済、1995)

他多数。