第25回 健康管理を中心とした企業の危機管理体制

    (産業医の視点から) ―餃子事件の対応も含めて―

平成251213日(金) PORTA神楽坂 18:3020:30

原 美佳子 氏(ハラ ミカコ)

日本たばこ産業() 本社人事サービス部健康支援室  産業医 医学博士

【略歴】

1983年に獨協医科大学卒業、消化器内科入局

1989年に獨協医科大学大学院内科系博士課程修了

198995年 獨協医科大学健康管理科助手

199596年 堀中病院内科勤務

1996年 メルボルン大学医学部公衆衛生学女性の健康学

                   ディプロマ修了

                 1997年に日本たばこ産業(株)北関東健康管理センター入社(保健部長)

                 2002年から日本たばこ産業(株)本社産業医 現在に至る

           二葉看護専門学校非常勤講師(前)

           獨協医科大学公衆衛生学講座非常勤講師(前)現在は研究員

           獨協医科大学消化器内科研究員

日本たばこ産業株式会社

会社概要(201310月現在)

国内たばこ事業、海外たばこ事業、医薬事業、飲料事業、加工食品事業、イベント・スポーツなどの事業分野   国内25支店、9工場、3研究所、海外70か国に事業所

設立:      198541

資本金:     1,000億円

  従業員数:    連結49,507人、単体8,925

 

JT本社における産業保健活動のご紹介

 

日本の脳・心疾患の労災補償状況

日本の精神疾患の労災補償状況

自殺者12年連続3万人を超える

   40代」、「経済苦」増える(20105月)

2012年の自殺者数(3万人を割った)

うつ病にかかるコスト

u  日本におけるうつ病にかかる社会的経済損失:7754億円(自殺者を含まず)

    自殺者を含むと:27千億円

                     (平成22年国立社会保障・人口問題研究発表資料)

内訳

—  労災対象者やその家族への労災補償給付金:456億円

—  休業者が失った賃金所得:1094億円

—  失業者への失業給付:187億円

—  生活保護対象者への生活保護費:3046億円

—  うつ病治療にかかった医療費:2971億円

—  自殺者26539人が生涯で得ることができた所得:19028億円

—  企業に発生する損失コスト:925万円

    「企業規模100900人に勤める30代前半男性社員(係長、年収600万円)がメンタルヘルス

     不調を発症し3ヶ月勤務、1年休職後、完全復職に3カ月要したケース」

うつ病の知識

—  気分障害はこの10年で2倍(厚生労働省患者調査)

    平成20年度:104.1万人 平成11年度:44.1万人

—  うつ病の生涯有病率

    アメリカ:女性21.3%、男性12.7%、全体17.1%(米国NCS調査) 

    日本:女性9.7%、男性4.6%、全体7.5%(平成14年厚生労働科学研究調査)

—  一年間期間有病率 

    アメリカ:女性12.9%、男性7.7%、全体10.3

    日本:女性2.8%、男性1.5%、全体2.2

—  うつ病は80%の患者で再発

    1回目再発率50%、2回目70%、3回目90

—  寛解は2/3 難治は1/3

 

健康支援室の年度活動方針

健康診断個別支援

—  個別面談時のメンタルヘルスチェックを実施(簡易構造化面談用紙を使用)

—  産業医による紹介状面談(紹介状受診率の向上のため)

健康診断集団支援

—  30歳の健康管理講話会

—  生活習慣病予防講話会

—  歩こうかい

—  メンタルヘルス講話会

—  ラインケア講話会(コンプラインスセミナーと同時開催)

—  社員の自立的活動の支援

2013年度 ~個別・集団支援活動総括~  人事サービス部 健康支援室

  集団支援活動 メンタルヘルス関連は後述

    健康講話会(予防を中心とした取組み)

      30歳の健康管理(本社ビル 2月予定)

      『いつまでも若い血管を!~+ 高血圧予防について~』 (仮)

      保健師と、社員食堂の管理栄養士が連携し実施予定。30歳社員に周知、参加希望者を募集。保健師がメタボ予防、特に高血圧を、管理栄養士が食事指導を分担し講話予定。

      40歳の健康管理(本社ビル 3月予定)

      『今なら間に合う!健康生活~+高血圧対策について~』(仮)

      保健師と管理栄養士が連携し実施予定。 40歳社員に周知、参加希望者に実施。

      食事・運動・睡眠について講話予定。

    その他研修講師

      新入社員研修(4月)

      原医師、保健師が実施。『心身の健康』をテーマ、メタボ予防やメンタルヘルス講話。

      JTグループ導入研修(8112月予定)

      原医師、保健師が実施。中途採用JT社員・関連企業プロパー社員『心身の健康』講話。

      新任マネージメント研修(58112月予定)

      原医師が実施。新任マネージメントを対象にラインケア対応を実施。

運動支援

      リフレッシュ教室(3年目)

l   2週間毎に継続実施。 

l   ヒーリング音楽を聴きながら腹式呼吸によるリラクゼーションと、ラジオ体操

        を実施。参加者からは「良い運動になる」と好評。

        ラジオ体操第1は東北支援もかねて「おらほのラジオ体操」を使用。

l   今年より数回に1回、中国事業部の参加者が講師となり中国の国民体操らしきものを実施。日本のラジオ体操と動きが全然違いテンポも速いため参加者には好評。

l   会員カードに出席シールを貼り、毎回参加賞を渡している。(プレゼント有)。

l   参加者は毎回10名程であるが、口コミで少しずつ新メンバーが増えている。

l   参加者からは体操に関する新しい情報が寄せられている。

      第8回歩こうかい

l   衛生委員会協賛企画、申込み者  名あり。

l   122日から3週間実施。仮のルートを本社(出発地)⇒静岡県熱海市(目的地)とし、100km目安で設定。更に希望者には、静岡県土肥金山まで200kmを設定。

l記録表を回収、コメントし返却。順位表(無記名)を作成、参加者へ配信予定。

  健康情報提供活動

    機関紙

      「読む美多民」

      4月:2013年度の健康診断が始まります!!

       5月: 躁病と躁鬱病の治療①【増刊号】

       6月: 躁病と躁鬱病の治療②【増刊号】

       8月:熱中症を予防し、元気に夏を過ごしましょう!!

      11月:メンタル不調の予防について①【増刊号】

      12月:メンタル不調の予防について②【増刊号】

      今後、2月頃に発行予定。

特定保健指導の総括

メタボリックシンドローム判定

l   2011年度から2012年度において、 「予備軍」、「基準該当」者が改善傾向にあった。

l   2013年度は「非該当者」の低下、「予備軍」、「基準該当」者の上昇が見られた。

 メタボ健診は健康指導していても若干微増の傾向にある。そこで30歳と40歳のまだ

 検診で異常が出る前の年齢層への生活指導改善が必要と実感している。

特定保健指導対象者

l   「動機づけ支援」、「積極的支援」合計で2012年度は17.2%だったが、2013年度は18.4%と上昇。

  【原因として考えられること】

   部内異動も含め全国からの異動や海外出国、帰国者による出入が多い。集団としての有意差は不明。今後も「予備軍」、「基準該当」者が増転ぜぬよう、継続的に個を支援する必要がある。

高血圧対策

               本社 血圧有所見率の状況

           有所見:収縮期血圧≧140 or 拡張期血圧≧90

           平均年齢: 本社 39.7歳 全国 44.8

担当エリアの血圧異常者は弊社の全国平均の半分くらいであり、減少傾向にあるが、これ以上増やさないような仕掛けをしている。

 

2013年度実績】 *20131130日時点

高血圧の基準該当者で面談を終了した50名中18に血圧計を貸与し、事後フォローを実施した。 

 

3か年計画で3年前の血圧の高い社員の割合に戻す目的で、血圧の高い社員には生活指導などの書かれたパンフレットを渡して生活指導をしている。

                         講演中の原先生
                         講演中の原先生

メンタルヘルス対策

  相談窓口

    メンタルヘルス専門医相談窓口

l   月一回午後(1300-1700)、委託している精神科専門医による相談日。

l   自ら来る社員は少く、健康支援室から相談が必要と思われる社員に声をかけている。

l   1回平均6名程度の社員が相談に来所。

l   利用者数は、別紙参照。

    職場復帰審査委員会(専門医面談と委員会は健康支援室で実施)

l   月一回午後、職場復帰に関する審査を人事企画部と外部精神科専門医2名で実施。

l   対象社員・家族や上司、管轄するエリア支援部保健担当産業医または保健師が来所。

l   社員23名が対象の場合、委員会が時間外まで延長することもある。

2014年度活動方針

【集団支援】(メンタルヘルス)

Ø  メンタルヘルス講話会(メンタルヘルス専門医実施)

Ø  ラインケア講話会 (原産業医実施。コンプラインスセミナーと同時開催)

  超勤件数とメンタルヘルス相談

  超勤件数が増加した月の2~3か月後にメンタル相談が増加する傾向があり、時間管理には

  管理職や人事労務担当、産業医が注意を払う必要がある。

 

衛生委員会との連携

  衛生委員会の参加 (1/月)

l   健康支援室利用状況の実績報告(年度末は年間報告)

l   労働衛生週間期間の館内放送

l   労働安全衛生計画の策定と総括

l   イベント「歩こうかい」への協力要請

  職場巡視

l   職場巡視 毎週1回 

l   執務環境パトロール 毎月1回 15

  その他

l   外部交流会 *201312月 予定

健康支援室 利用状況

 

本社ビルのメンタルヘルス相談等

l  社員と医療職が同じビルに勤務している為、産業医が一次対応者となることが多い。

l  メンタル疾患の「困ったちゃん」タイプの社員がいる部署では、フォローする側の周囲の社員が対応に苦慮し、保健師が不満をぶつけられることが散見された。 

l  別の事例にても、対応している上司に不満がたまっていたため、保健師が愚痴を聴くなど対応。

生活習慣病予防講話会(2月頃実施予定)

l   内容:メタホリックシンドローム゙の説明

    食事・運動・休養の注意点、リラクゼーション等

    対象者:年度年齢3840歳の社員 (欠席者には、翌年度も参加を呼びかけている)

良かった点

l   対象者をメタボ該当者だけではなく、予防の観点や、参加し易さ

    の観点から、年齢で区切って対象者を決めている。

l   昨年度のアンケートでは、食事、運動、休養の解説について

  “わかり易い”と82%が回答した。

今後の課題

l   理想的食事の実例やレシピ等、食事の具体例を要望

 する 意見あり。今年度は、簡単料理の実演など予定。

 

講話会

 

l  メンタルヘルス講話会 (メンタルヘルス専門医)

l  ラインケア講話会 (原医師)

l  新任管理職のメンタルヘルス対応

l  新入社員の健康管理(保健師と協同講話)

l  経験者採用時の健康管理

l  その他(人事部等主催)

  新入社員研修「心身の健康」4月)  産業医・保健師対応

  経験者採用導入研修「心身の健康」7812月) 産業医・保健師対応

  新任マネージメント研修(ラインケア)5710月)  産業医対応

社員の自立的活動や企業活動の支援

l  皇居3周、駅伝大会 (2012年多摩川土手、翌年は味の素スタジアム)1チーム6名、1名以上女性

l  ボーリング大会

l  植林活動の医療班

l  部対抗ゴルフ大会

l  ボランティア活動

    ①小児末期がんの患児の東京近郊アミューズメントパーク訪問時のサポート

    ②ウガンダの子供の給食サポート(1食20円の寄付)

震災後のメンタルヘルスケア

東日本大震災後 東北エリアのメンタルヘルス対応

l  実施方法

l  実施内容:東北エリアの全社員313人を対象に、個別面談で心身の不調の有無、被災状況等を聴き取り、訴えを東日本大震災被災後記録票に記録

l  パンフレット等を配布し情報提供も実施。

l  実施期間:201168日(水)~76日(水)の定期健康診断時

面談時(被災後2~4ヶ月時)の体調の変化

家族等の健康状態の変化(東北エリア)

   l  入院・通院・体調不良など:11

  l  死亡 (親類・家族・友人):23人 

   ※死亡については震災が直接の死因でないもの(震災後持病が悪化して死亡等)も計上した。

東日本大震災後 本社のメンタルヘルス対応

l  相談体制は既設、特別な体制はとらなかった。

l  健診後の保健師面談を早めに実施、その際にメンタルヘルス質問票を使用。

「首都圏で巨大地震」不安6割 ストレス慢性化の懸念も 筑波大調査

2011.11.7 地震・津波・地球科学

 首都圏が巨大地震に襲われると不安に感じている人は、1都2県の住民の6割を超え、半数以上の人が地震やそれに伴う景気の後退を不安視していることが筑波大の松井豊教授(社会心理学)らの調査で6日、分かった。

 東日本大震災から半年が経過しても余震や原発事故による放射能問題が収束せず、ストレスが長期化していることを示した形で、社会不安が慢性化することも懸念される。11日から静岡市で開かれる地域安全学会で発表する。

 調査は東京都、神奈川、埼玉両県の住民を対象に9月中旬、インターネットで実施。社会や個人生活、地震、放射能などに関する約20項目の中から、不安に感じることをすべて選ぶ方式で、20~59歳の男女783人の回答を分析した。

 全体で最も多かったのは「南関東に巨大地震が起こる」で、3分の2に当たる66・4%が不安に感じていると回答した。首都直下地震への懸念とみられる。次いで「東海沖や東南海で巨大地震が起こる」(54・8%)、「不況が深刻になる」(52・9%)の順だった。

東京電力福島第1原発事故の関連では、「放射性物質で汚染された食品が出回る」(50・3%)が最も多く、「放射性物質に関することで政府が情報を隠している」(40・0%)、「子供の生活場所が放射能で汚染される」(34・0%)などが続いた。

 大震災関連では「被災地で自殺する人や心を病む人が増える」が28・6%。津波への不安は比較的少なく、「再び大きい津波が起こる」は24・1%だった。

 別の研究チームによる平成17年の調査で上位を占めた治安悪化や少子・高齢化などへの不安は今回、大幅に減少しており、地震や放射能への不安が社会問題への不安を上回る傾向がみられた。

 松井教授は「余震や放射能の影響が継続し、収束感が弱いためか、ストレスが予想より多く残っている。半年もたつと慢性期に入るので、ストレスは長期化するかもしれない」と話している。

震災対応のまとめ

l  震災直後は眩暈感、不安感などの症状が中心であったが治療を要する程度ではなかった。

l  本社では直接被災の無い社員が、担当外の業務が生じ、反応性(適応障害)の変化が生じた。

l  本社と東北エリアで、うつ状態等で加療し寛快していたが遅発性に再燃した事例があった。

l  本社ではメンタル相談の件数が昨年より増加している。

l  超過勤務件数も増加している。

l  さらに継続的な経過観察が必要

 

自身の震災時の行動

l  2時過ぎに帰宅のため電車に乗る

l  240分過ぎに電車が急停車

l  1時間ほど車内待機となり、その後最寄り駅まで移動指示が出る。

l  乗客がワンセグで東北地方の震災報道を提供してくれた。

l  車内に鉄道関係者がおり、線路の安全確認は目視のため、本日中の復旧は難しいとのこと。

l  最寄駅から国道まで市内バスがあり、国道まで移動(定期路線は渋滞で別ルートを走行)

l  国道は渋滞(バスは運行していたが渋滞のため進行せず)

l  携帯電話で通話はできず、Cメールのみで家人と連絡(通信のタイムラグあり)

l  会社から安否確認メールが送信されるが、返信がされないため自動で何回も送られてくる。

l  6時間30分ほど歩き帰宅(途中公民館、病院、コンビニなどは開放されていた。自転車を買い求める人あり。作業着店は運動靴を販売していた。踏み切りは遮断機が下りたままであった)

l  国道沿いの電気店ではテレビで震災、津波の報道を放送していた。

3.11に本社ビル内で起こったこと

l  高層ビルであり、ゆれが激しかった⇒健康支援室のシャーカステンが転倒し、引き出しが飛び出したが、事前に耐震対応が施行されていた什器等は転倒など無かった)

l  エレベータ停止⇒階段で移動、車椅子社員は階段搬送機を使用し階下へ搬送(34階のビル)

l  電気、水道などは問題なかった⇒トイレや給茶機、社内電話の使用可能

l  公共交通網が遮断され、内閣府からの社内待機指示があった。夕方には帰宅できそうな社員(徒歩で帰宅できる程度)は帰宅させた。⇒社内待機者にサバイバルグッズの配布

l  健康支援室スタッフは健康不全者の対応のため待機となり、交通が稼動してからの帰宅解除となった⇒健康不全者はゆれのため船酔い状態になった1名のみであった。

企業の対応

l  就業時間後帰宅できる社員はサバイバルグッズ入りのリュックを持ちヘルメットをかぶり徒歩帰宅した。(7時間程度)

l  サバイバルリュックの内容:水500ml×2、干飯(3食分)、乾パン(1袋)、軍手、笛、光る棒、保温シート(emergency blanket)、圧縮タオル、簡易トイレ(希望者)

l  保育所、学校などのスタッフは児童のお迎えに問題が、あり帰宅できなかった。

震災直後の週明けの行動

l  金曜日の就業時間内に起きた災害にもかかわらず、「月曜日は出て来られる人は出て来て下さい」とのメールが入信

l  日本人のまじめさが発揮され、早朝にもかかわらずタクシーも移動手段に使われていて駅の乗り場は混雑

l  JRと私鉄が並行しているエリアでは停電で両方が不通

u緊急時は必要最低限で活動できるような体制作り

u緊急で稼働させる必要のない業種は自宅待機が原則

u異動の混雑を避けるためにも出社人員を減らす

問題点

l  交通網が確保されてから移動するか?

l  移動手段は?

l  連絡方法は?

l  徒歩であればルート確認。

l  トイレなどがルートに確保できているか?

l  ルートは安全か?

                    聞き入る参加者
                    聞き入る参加者

 

海外勤務者への勤務地域訪問の有効性

海外勤務者の健康管理などの問題

l  海外に滞在する日本人勤務者数は1990年では37万人で2000年には53万人に増加している。

      JTは137名の駐在者があり、スイス、ドイツ、ロシア、アメリカ、中国、香港、

      シンガポール、オランダ、トルコ、オーストラリアなどである

l  海外勤務者ならびに帯同する家族は、国内と異なる環境下でさまざまな健康問題などを抱えており、派遣企業側にも充分な健康管理対策の構築が求められている。

l  滞在国にあわせた予防接種や予防教育などの対策。

l  生活習慣病やメンタルヘルス不全などの健康問題が新たに生じてきている。

海外巡回健康相談及び巡回地域および巡回国
  20074月現在    (労働者健康福祉機構・海外支援海外業務班)

l  アジア:中華人民共和国、ベトナム、マレーシア、インドネシア、ネパール、

     バングラデシュ、インド、スリランカ、パキスタン、ミャンマー、

     モンゴル、ブルネイ、ロシア、トルコ

l  中近東:アラブ首長国連邦、オマーン、バーレーン

l  アフリカ:エジプト、エチオピア、ケニア、タンザニア

l  中南米:メキシコ、グァテマラ、コスタリカ、パナマ、ベネズエラ、コロンビア

l  東欧:ルーマニア、ハンガリー、ポ-ランド、チェコ、ブルガリア

産業保健管理職としての役割

法律的背景

l  出国時健康診断の実施

    事業者は、労働者を6ヶ月以上派遣させる場合、派遣前及派遣後に安衛則 第44条第1項に

    示す項目に加え医師が必要と判断したものについて、健診を行わなければならない

l  健診および事後措置

    健診対象者:安衛則に定められ、海外勤務する本人のみ(JTは随行家族も含む)

    健診項目:定期健診に加え感染症に対する抗原抗体反応、便虫卵ならびに潜血検査、上部

    消化管検査、腹部超音波検査などが実施されている。

    一時帰国時健診:派遣先では日本の労働法は適応されないため、一時帰国時に健診を実施。

海外勤務の現地訪問の目的

l  訪問時期:2007年10月20~28日

l  訪問場所:スイス・ジュネーブ(JTI本社)

         ドイツ・トリア(たばこ工場)

l  職場環境を巡視し、駐在社員との面談 

    ○本人の健康状態

    ○職場環境

    ○家族の問題や生活環境等

l  現地の管理職(人事労務関係、衛生関係)との打ち合わせ

現地工場(トリア)と日本の工場との比較

トリア              日本

工場医師の業務     工場内の外傷対応         健康管理など

年1回程度の巡回         月1回の巡回

衛生管理者の巡回    3~4ヶ月に1回         週1回

健康診断        3年に1回            年1回

衛生委員会       月1回              月1回

健康問題の中心     アルコール依存症メンタルなどの  生活習慣病

疾病は個人の問題         メンタル不全

被服          制服はあるが自由         制服

結果(相談内容等)

ジュネーブにて30名の面談を実施

l  9月頃より日照時間が減り、陽がほとんどささない生活環境陰鬱な気分

l  通勤時間が短いためプライベートの時間が多い単身者は夜が長い

l  人の手が加わった物品の物価が高い人件費が高いため

l  仕事への考え方や文化の違い職場の個人電話は本人以外は応答しない等

l  家族のトラブル妻の孤独感、子供の学校問題

l  健診は個人で予約し受診するEUのどこでも可能だが未受診が多い

l  病気療養休暇は有給休暇ではない国民の休暇は少ないが休暇がとりやすい

l  事務所内は間接照明室内が暗い

トリアにて19名の面談と工場内の見学を実施

l  工業団地内にある環境が良い

l  子供の学校問題で、居住はルクセンブルグであり、片道約50㎞の車通勤

l  就任早々管理職になり戸惑うこともあるさらに上位のサポートが必要

l  海外出張が多い(EU内だと日帰りもあり)

駐在難民にならないよう組織的な対策が必要

 

中国餃子事件を経験して

中国餃子農薬混入事件

2008130日に報道公表された「JTフーズ中国餃子農薬混入事件」に対し、会社が取った危機管理対策の一員(医師3名)となった。

 

 

l   お客様相談などに入った相談内容を検討し、担当者に返す

l   薬品の検証

l   病院のリサーチ

l   社員対応(体調不良者に対し)

1月30日の報道 (読売新聞)

中国製冷凍ギョーザで食中毒、千葉と兵庫で3家族10人

 千葉、兵庫両県の3家族計10人が昨年12月28日から今月22日にかけ、市販されていた中国製の冷凍ギョーザを食べた後、吐き気や下痢など食中毒の症状を訴え、女児(5)が一時、意識不明の重体になるなど9人が入院していたことが30日、分かった。 両県警が調べたところ、ギョーザとパッケージの一部から有機リン系農薬「メタミドホス」が検出された。

 商品は、いずれも中国・河北省の工場で製造されており、パッケージには穴など外部から混入させたような形跡がないことなどから、警察当局は、「製造段階で混入した可能性が高い」と見ているが、国内の流通過程についても詳しく調べている。輸入元で日本たばこ産業(JT)の子会社「ジェイティフーズ」(JTF、東京都品川区)は同日、この工場で生産された23品目の商品の自主回収を始めた。

食品による薬物中毒事案について(第50 報:08/10/31

        食品による薬物中毒事案に関する関係省庁連絡会議

被害の現状

   中国産冷凍ギョウザを食べて有機リン中毒(メタミドホス)と確定した患者数は10

   (千葉県7 名,兵庫県3 名)であり,先日の公表から変化はない。

   中国産冷凍ギョウザによる健康被害が公表された130 日以降に都道府県等にあった

   相談・報告については,調査の結果,神経症状などの有機リン系農薬による中毒症状が

   ないことなどにより,全て有機リン中毒が否定されている(有機リン中毒が否定された

   事例数5,915名(331 日現在))。

これまでの事案の概要

   ① 千葉県第1 事案(警察認知日 平成20 年1月25 日)

   平成191228 日,千葉県稲毛区において,中国製の冷凍餃子を食べた2人が

   おう吐等の健康被害を訴える事例が発生した。

   当初1名が1日入院していたが,現在は退院している。

   ② 千葉県第2 事案(警察認知日 平成20 年1月23 日)

   平成20 年1月22 日,千葉県市川市において,中国製の冷凍餃子を食べた5人が

   おう吐等の健康被害を訴える事例が発生した。

   5 人入院,うち,1 人が重篤,4 人が重症であったが,重症の4 人は215日に,

   また,重篤の1人も216 日に退院した。

   ③ 兵庫県事案(警察認知日 平成20 年1月6日)

   平成2015 日,兵庫県高砂市において,中国製の冷凍餃子を食べた3人が

   おう吐等の健康被害を訴える事例が発生した。

   3 人とも入院していたが,3 人の健康被害者は125 日までに退院した。

2008年529 日(木)警察庁発表

   兵庫県警察において,兵庫県高砂市事案の被害者の食べた餃子のトレーに付着していた

   餃子の具片等の定量分析を行ったところ,5月29日,高濃度のメタミドホスが検出さ

   れた事実等を広報した。(1g 中 約13.2mg(約13,200ppm)を検出。)

2008年515 日(木)警察庁発表

   千葉県警察において,千葉県市川市、千葉市事案の餃子等の定量分析を行ったところ,

   5月15日,高濃度のメタミドホスが検出された事実等を広報した。(皮1g

   約31.13~約0.04mg31,13040ppm)、具1g 中 約16.620.03mg

   (16,62030ppm)他4点からも検出。)

中国餃子の問題点

l  対象者が無差別であった。

l  生協(予約販売)で販売されている。購入者が判定でき、生協が出向いて謝罪した。

l  調理品の輸入であり、検疫所の検査を通過しやすかった。(多品種の素材を使用しているため、検査対象を絞りづらいなどの理由)

l  農薬が商品に満遍なく混入していなかったので、一部の検査では検出されづらい。日本で使用禁止農薬であり検査対象となっていなかった。

l  流通経路などが複雑であり、冷凍食品であり、消費者に届くまでに期間(半年以上)が長かった。現地工場にある作業工程をチェックしている映像は、その時点で画像を残存させることを前提としていない。

l  薬物混入が、事件性(殺人事件)ありと考えられ、警察当局から企業側への連絡が遅くなった。

l  2月は中国の旧正月で警察当局の初動捜査が遅れた。

l  軽度の症状はノロウイルスなどの食中毒と混乱しやすい。

l  症状がはっきりしないこと、半年ぐらい前のことなどで、病院を受診しても、診察を受けられなかった。

今回経験したことで感じたことなど

企業側の問題点

l  日本の警察、中国の警察を含めた国家的な問題となり、企業独自での対応以外の問題も生じた。

l  内部情報が、各担当者に伝わらないこともあった

l  担当業務の内容が不明確のまま実働に入ってしまった。

産業医として何ができたか

l  医療現場を含めた保健診療の問題点。

l  電話相談の想定問答、受診者の要望にあわせた病院のピックアップ

l  餃子担当社員等への面談などの時間を持つことができ、休養の重要性を伝えることができた。

l  3月に職業性簡易ストレス調査を実施したが、業務量の多さを感じているものの、ストレスは思ったほど大きくなかった。

l  餃子担当社員は、騒動が一段落した直後に狭心症を発症し、バイパス手術を受けた。

 

講演の終わりにあたり

l  産業保健の取り組みとして、健康診断を軸に疾病予防と健康増進に向けた取り組みを行っている。

l  メンタルヘルス不全者、自殺者が増加しており、社会問題となっている。企業としての取り組みにも要求度が高くなり、強化しなければならい。予防策を実施しているが、発症件数は減少しないのが現状。個人や職種、職場環境によりそれぞれ対応が異なる。またマニュアル化は不可能なことが多く、それらの対応には事前準備も必要で、上司や担当者の理解促進も課題となっている。

l  健康診断時にメンタルヘルス不全者のチェックが厚生労働省通達で施行される予定。そのために産業保健スタッフのスキルアップが必要である。

l  企業内の専門職として、多種にわたる知識が要求されるため日々の研鑽やリサーチは必要である。

 

ご参考

JTの災害対応マニュアル

50頁を超えるマニュアルとなっているが、職制に応じ読むべき頁の指定がなされており、図表や色彩により見易さも図られている。

総論

     I.        本マニュアルの目的

    II.        本マニュアルの範囲

  III.        本マニュアルにおける用語の定義

各論 大規模災害発生時の対応

【対応体制】

     I.        JTグループの災害対応体制

    II.        緊急時の連絡手段の優先順位

  III.        首都圏以外災害時の情報伝達ルートおよび各社員の役割

   IV.        首都圏災害時の情報伝達ルート

【行動】

     I.        社員の行動基準

    II.        各社員の行動

【災害対策本部(現地災害対策室)対応事項】

     I.        危機が発生した場合の対応原則

    II.        安全確保

    V.        災害支援

【その他】

     I.        事前対策

【別紙】

別紙群

                 懇親会参加者
                 懇親会参加者

 

原先生著書・論文

l   「外来精神医療」第12巻大2号 特集-「被災地でのメンタルヘルス支援ーその後」

    「東日本大震災後に産業現場で対応」

l   消化器心身医学 14(1): 82 -87 2007.

     転勤を契機に不眠が併発し、産業保健スタッフの適切な対応により良好な職場復帰をした

     過敏性腸症候群の1症例

l   産業保健におけるメンタルヘルスケアの重要性

     資料名:消化器心身医学 巻:11 号:63-67 20040420

 

○専門医等

日本医師会認定産業医、日本内科学会認定内科医、日本消化器内視鏡学会指導医、日本消化器がん検診学会認定医、日本消化器病学会専門医等

○学会関連

日本大腸検査学会評議委員、消化器心身医学研究会幹事、就労女性健康研究会 世話人(発起人)、産業衛生学会関東地方会ニュースレター編集委員