第14回  国際テロの現状と日本の対策

平成24年9月11日(火) PORTA神楽坂 18:30 - 20:30

 

公益財団法人 公共政策調査会 第2研究室長 河本 志朗 氏(当研究会 副代表理事)

 

近年、国際テロ事件の発生数と死者は横ばいであり、明確に減少とは言い難く、地域別では中東と南アジアが突出している。2011年の国際テロ事件を分析すれば、イスラム教過激派によるテロ事件がその殆どを占めていることが判る。帰還を前提としない自爆攻撃もあり、被害は確実に甚大なものとなっている。米国同時多発テロから11年目の今日(911日)、実態と背景を正しく把握することは大変に意義のあることと考える。

        河本先生
        河本先生

イスラム世界は、610年にムハマンドがメッカで神の啓示を受けたことから始まり、海上交易やイスラム勢力の東進により北アフリカから東南アジアまで勢力を拡大した。現在、イスラム諸国会議機構加盟国は57であり、教徒の人口ではインドネシア、パキスタン、インド、バングラデデシュが上位であり、合計数で1213億人とされている。

(欧米のイスラム教徒は1,700万人~2,200万人と推定)

 

次に、なぜイスラム主義テロが多発することとなったのかを考察すると「イスラム教徒の国家をイスラム法に基づいて運営されるイスラム国家とすることを目的とした政治運動」の発生を認識せねばならない。

イスラム主義の背景には、植民地支配、カリフ制の廃止、近代化への失敗など、イスラム諸国の衰退という危機感があったが、その中からごく一部に暴力的な手段を正当化する者が出現したのである。

また、その運動を高めてしまう中東戦争やソ連のアフガン侵攻なども発生した。

以上の歴史の中から、ビンラディンが1979年にアフガンで義勇兵支援を行い、1988年にアル・カイダが創設され、グローバル・ジハードへと展開する原動力が生まれた。アル・カイダは世界中に展開またはテロ組織と関連し、訓練や教育を通じてネットワークを構築している。彼らのテロを実行・未遂で並べれば驚くほど多くの活動を行っており、イスラムの敵を倒すことはイスラム教徒の義務であるとの主張が確認できる。

                   質疑応答に聞き入る参加者
                   質疑応答に聞き入る参加者

テロリストの支援と訓練の拡大やホワイト・アルカイダの出現、欧米イスラム教徒の若者が過激化するホームグローンなどで、テロ実行者の把握と実行阻止がより困難な状況となっている。

 

我国でもアル・カイダ関係者が潜伏していたことが判明し、通過地点や資金調達などの国際的ネットワークに組み込まれている可能性が指摘されている。

テロの未然防止の対策や活動は当然必須であり、犯罪に強い社会の実現のための行動計画が平成2012月に犯罪対策閣僚会議にて合意された。この第6章に「テロの脅威等への対処」があり、テロに強い社会の実現や、水際対策の推進など8つの大項目から成っている。

テロの手段は武器や爆弾が主な物であり、警戒もこれらを対象に行ってきたが、核物質(爆弾)、生物兵器、化学兵器も警戒の対象にすべきであり、テロ対策に一層の注意が必要である。このためには地域や機関が訓練を重ね、問題点と解決方法の模索や連携の確認が必須となるであろう。

平和と安全は、電気・ガス・水道などの社会インフラのさらに基礎であると考える。

 

最後に、イスラム教徒の心情の理解と文化の理解も必要であると加えておく。

テロには賛成しないが、イスラム教徒のおかれた現状を不公正だと感じる者は多い。

どのような主義主張の運動であれ、テロに訴えるのはその中のほんの一握りに過ぎない、飽くまでも、イスラム教徒=テロリストではないことを肝に銘じなければならない。