第13回  放射線の健康影響とICRPの防護体系

平成24年7月6日(金) PORTA神楽坂 18:30 - 20:30

 

日本アイソトープ協会専務理事(前放射線医学総合研究所長・理事長) 医学博士 佐々木 康人 氏

 

重大な問題として放射線の健康への影響が懸念されているが、防護の指針や目安の設定は如何になされているのかと、その体系及び関係する組織について正しく認識したい。

      講演中の佐々木先生
      講演中の佐々木先生

例えば不注意に見れば矛盾する目安も、前提を理解の上で見れば当然の場合がある。

平常時計画被ばく線量の「線量限度の適用」として、

・公衆被ばくの線量限度  年間1.0mSv(実効線量)

 とされることに対して、

一般人の放射線被ばくの世界平均値は、

・自然放射線  年間2.4mSv(実効線量)である。

この両者の解釈は、自然放射線はあるものの、被ばく線量を可能な限り低く抑えるために設定されたものである。

その他の、一般人の放射線被ばく世界平均の数値は、

・放射線診断     0.4mSv /

・大気圏核実験    0.005mSv /

                   ・チェルノブイリ事故 0.005mSv /

                   ・核エネルギー製造  0.002mSv / 年 である。

これらの数値を発表しているのがUNSCEARUnited Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation)である。

UNSCEARは国連の委員会で1955年に設置され、世界の放射線源と影響について情報収集、検証し、被ばくと影響を推定しており、21か国が代表を送り、年1回委員会を開催して国連総会へ報告を行っている。背景には、当時の大気圏内核実験による放射性降下物への不安と関心が高まったことがある。

 

それまでにも情報収集や報告を行う国際的機関があり、総論的な勧告を繰り返してきた。1928年(昭和3年:昭和天皇即位の礼)に国際放射線防護委員会(IXPRCInternational X-ray and Radium Protection Committee)が創設された。この時の委員長がロルフ・シーベルトである。IXPRC1950年にICRP(International Commission on Radiological Protection)に改名され、活動を継続中。

活動とは、常に助言的役割で、放射線防護の原則についての勧告を果たしてきた。

この勧告は、各国、各地域、各国際機関が発表するさらに詳細な規範や規則の基礎をなしている。

(国際原子力機関IAEA1957年に設置され、原子力の平和利用を促進し、軍事転用されないための保障措置の実施を行っている。)

                     受験生のように熱心な聴講風景
                     受験生のように熱心な聴講風景

放射線防護の目的

1.平常時(計画被ばく状況)

  身体的障害は起こさず、ガンのリスクをできるだけ低く抑えるように、公衆と放射線業務従事者

  の被ばくを管理する。

2.非常時(緊急時被ばく状況)

  重篤な放射線障害を回避するよう、公衆と初期対応に従事する作業者の被ばくを管理する。

 

線量限度の適用

・公衆被ばくの線量限度 年間 1mSv(実効線量)

・職業被ばくの線量限度 5年間に 100mSv 特定の年に 50mSv

・安全と危険の境界を示す線量ではない

 

内部被ばく対応

・放射能汚染物に触れない、摂取しない(吸入、携行摂取、傷のいずれでも)

・摂取量と放射性同位元素(RI)の種類同定

・生理的モデルを用いて算出した換算係数を用いて、全身の被ばく線量(実効線量)と臓器線量(透

 過線量)の推定(預託線量)

・低減化(ヨウ素剤、プルシアンブルー、下剤、利尿剤、キレート剤等)

 

汚染の事後処理

・環境汚染の測定調査、立入禁止区域の設定、除染

・ヒトの被ばく線量推定

・健康影響推定と対応

・迅速で合理的な計画と実行

 ポイント:専門分野横断的、省庁横断的、被災者代表の参加

 

その他の指標や目安の数値解説はスペースの都合により割愛。