第4回 平成25年3月9日 専売ホール 13:00~17:00

「今後のエネルギー問題を考える」

~エネルギーの安定確保は?新エネルギーへの期待は?新旧エネルギーの調和は?~

 20113月に発生した「東京電力福島第一原子力発電所事故」を契機として、エネルギーの安定供給について国内外で議論が活発化しています。

 201212月の政権交代に伴い、エネルギー政策の見直しも検討されている今日、私たちもエネルギー問題を自らのこととして、あらためて考える必要があります。

 海外に多くの資源を依存している我が国にとり、低コストでのエネルギー安定的確保と、地球温暖化対策への貢献とのバランスをどう図るのか、そしてエネルギーの安定確保・経済性・環境の「3E」を総合的に配慮したベストミックス解をどう実現するか、国民各レベルでの真剣な議論が必要です。

 今回の市民講座では、各技術分野の専門家をお招きして、環境対策としての期待が大きい新エネルギーとその経済性、安定確保に実績のある在来エネルギーに期待されること、また、エネルギー問題解決の実現について、講演をして頂きました

講演1 13:0013:50 

   

太陽光発電の現在動向と将来展望 

 

独立行政法人 産業技術総合研究所

太陽光発電工学研究センター 所長

 

近藤 道雄 氏

 

プロフィール

1980年京都大学理学部卒。1987年大阪大学基礎工学研究科博士課程修了、工学博士。1987年東京大学物性研究所助手。1993年電子技術総合研究所主任研究官。2004年産業技術総合研究所 太陽光発電研究センター長、現在に至る。

東京工業大学総理工物質科学創造専攻 連携教授併任。研究分野は半導体物理、半導体工学。

2001年薄膜シリコン太陽電池の研究によりPVSECPAPER AWARD受賞、2008年日本経済団体連合会会長賞(連名)。

講演概要

 原発事故以来、エネルギー政策が大きく見直されており、太陽光、風力といった自然エネルギーへの注目が高まっている。しかしその一方で、自然エネルギーはコストがまだまだ高く、安定供給に問題があるため、大量導入に対しては慎重な意見も根強い。特に最近では円安の影響で燃料費が高騰し、原発再稼働への圧力も高まってきている。

 これから日本、あるいは世界はどこを向いて進もうとしているのか、それを決めるためには何を判断基準とし、何を解決しなければならないかということを考えることが必要である。太陽光発電は枯渇することのない、安全安心なエネルギーであることは今や自明な道理である。それを実際にどう使いこなすかという段階に入ってきている。

 まず太陽光発電の発電コストを下げる方策は何か?どのような技術があり得るのか?ということからはじめて、それがシステムとして年間にいかに多くの電力を安定的に供給するにはどうするかという問題にまで踏み込みながら、太陽光発電のエネルギー源としての可能性を論じてみたいと考える。

 

以下のスクリーンは講演からの抜粋です。

講演2 13:5514:45

 

 風力発電の現状と今後の展望

 

一般社団法人 日本風力発電協会

副代表理事 企画局長 

 

斎藤 哲夫 氏

 

プロフィール

1971年より富士電機製造㈱(現:富士電機システムズ㈱)にて、主に水力発電所および電力系統の制御システム設計に従事。1998年より同社にて風力発電関連業務に従事。2001年、日本風力発電協会設立に伴い、同協会の理事(非常勤)就任。2007年より電源開発株式会社にて、風力発電事業関連業務に従事。2010年、()日本風力発電協会の体制変更に伴い、専従職員として風力発電導入促進業務に従事。
現在、環境省低炭素社会づくりのためのエネルギーの低炭素化検討会委員
   NEDO次世代等風力発電技術委員会委員
   NEDO「系統連系円滑化蓄電システム技術開発」共通基盤研究専門委員会委員

講演概要

風力発電の導入促進に向けて

~風力発電の現状と今後の展望~

 

 2012年末における世界の風力発電導入量は、約28千万kWと国内電力会社の合計発電設備容量の約1.4倍に達しています。一方日本の導入量は、20133月末時点で約256kWと世界の導入量に比して約1%と停滞しています。

 純国産エネルギーであり、エネルギーの安定供給、地球環境の保全、新規産業の育成にも寄与する風力発電の現状と導入促進を図る為の施策、世界の動向および一般市民などから日本風力発電協会へ問い合わせが多かった項目とその返答内容などを紹介します。

 

 1.一般社団法人日本風力発電協会

 2.世界と日本の風力発電導入実績

 3.風力発電の導入意義と主な日本メーカ

 4.風力発電のポテンシャルと中長期導入目標

 5.風力発電導入促進に向けて(課題と対策)

 6.日本風力発電協会へ問合せが多かった項目

 

以下のスクリーンは講演からの抜粋です。

講演3 15:0016:30

 

再生可能エネルギーの課題と火力発電への影響

 

株式会社 IHI エネルギーセクター

主幹・技術士

 

吉田 敏明氏

 

プロフィール

1968IHI入社以来、ボイラ設計・メンテナンス、原子力開発、燃料電池開発等、動力エネルギー関係業務に合計45年間従事。原子力製鉄研究組合への出向、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)研究組合への出向も経て、現在は各種発電システムの経済性比較検討や高温設計等に携わっている。併せて後進の技術指導にも当たっている。

講演概要

 

1.はじめに

 エネルギー問題を考える場合、①経済性(Economic Competitiveness)、②エネルギーの安定供給(Stable Energy Supply)、③環境適合性(Environmental Adaptability)のいわゆる「3E」のバランスを上手にとることが必要である。

 一昨年3月の原発事故を受けて再生可能エネルギーが注目を集めているが、再生可能エネルギーによる発電は①お天気任せで出力が不安定、②設備利用率や出力密度も低いため経済性がない等の問題があるにも関わらず、CO2を排出しないので環境性に優れるとの1点のみから再生可能エネルギーによる発電が大量に導入されようとしている。

 一昨年2月に東京で開かれたVGBと火力原子力発電技術協会との技術交流会や、同年10月にドイツで開かれたVGBとの技術交流会及びVGB大会に出席して得られた欧州での再生可能エネルギー大量導入による火力に及ぼす影響の実態について述べると共に、我々はエネルギー問題にどの様に取り組むべきかについて述べる。  

注:VGB: Verenigate Grosskraftwerke Betreiber (欧州発電技術協会)

 

2.再生可能エネルギーの問題点

表1 我が国の各種発電方式の運転状況と設備利用率

 

 再生可能エネルギーによる発電は、表1に示す様に①お天気任せで不安定、②設備利用率や出力密度も低いため経済性がないなどの問題がある。

 再生可能エネルギーの導入で先行するドイツでは、2012年上期末にその導入量が全電力量の25%にもなったことで色々な問題が出てきた。 

 一つは固定買取制度によって、ドイツ国民は高い電気料金を払わねばならなくなってしまった事。もう一つは、火力発電の年間運転時間が7,800hrsから2,600hrsになってしまった事により、火力発電に投資する人がいなくなってしまうという問題が出てきた事である。

 この様な状態になったため、20121010日~12日にドイツのマンハイムで開かれた2012年のVGB大会では、現在の欧州の電力業界は土砂降りの状態であり、これ以上再生可能エネルギーを導入するのが良いのかどうかの岐路に立たされているとの話があった。

 

3.火力発電への影響と対応策

 大きな出力変動は周波数変動をもたらす。これは、周波数は発電と負荷のバランスで決まるからである。周波数が変動すると家庭では電灯がちらつく程度で済むが、産業界では大きな問題になる。電動機の回転数は周波数に比例し、ポンプやブロアの様な機器の出力は回転数の3乗に比例するので、出力が大幅に変動すると振動による機械系の疲労が問題になる場合があるからである。

 この様なことから、我が国では周波数変動の許容値は50Hz(関東)や60Hz(関西)に対して0.2Hzと言われている。(注:沖縄は0.3Hz

 お天気任せの再生可能エネルギーをバックアップするためには、火力発電は、①より低い最低負荷と、②より速い負荷変化速度などが必要である。

 IHIでは、石炭焚ボイラにワイドレンジバーナの採用や微粉炭機の回転数制御などの運用高度化技術を適用することによって、最低負荷は15%L、最低負荷~100%Lまでを2バンドでEDC運用し、15%L40%L間の負荷変化率は2%/分、40%L100%L間は3%/分で実運用できる様になっているが、再生可能エネルギー大量導入時にはこの様な技術などを応用することによって、簡単ではないが石炭焚火力でもより速い負荷変化速度の運用ができると考えている。

 

4.おわりに

 発電設備の様な大規模な新技術の開発には、最低でも10年以上の年月が必要である。

現状で特効薬になるほど効果があり確実な技術やエネルギーは存在しない。

表2 各種発電方式の特性比較

 

 表2に示す、各種発電方式の特性を比較すると、再生可能エネルギーの利点はCO2排出量が少ないという1点のみであることが分る。

 再生可能エネルギーは自然エネルギーとも言われることから分るように、その発電量が気象などの自然条件によって大きく変動する。

 従って、蓄電池を設置するか既存の火力発電などのバックアップがないと、周波数変動などの問題が発生する。これらの設置費用や対策費はばかにならない。自然条件は国によって異なるので、欧米諸国が再生可能エネルギーに注力するから我が国もという具合に、単純に再生可能エネルギーへのシフトが良いとは考えない。従って、出力の安定性、経済性に優れた火力がしばらくは主役を続けると考えるが、これは私の個人的な見解である。

 本発表が、本発表を聴講される皆様にとって、3.11以降の我が国の電源構成をどの様にすべきかを考える際のたたき台になれば幸いである。